2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K01585
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
伊ヶ崎 大理 日本女子大学, 家政学部, 教授 (10336068)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松尾 美紀 京都産業大学, 経済学部, 准教授 (50437282)
内藤 徹 同志社大学, 商学部, 教授 (90309732)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 少子化 / 集積 / 子どもを持たない家計 / 妊娠率 / 子育て援助 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者(伊ヶ崎)の主要な貢献は以下の2点である。第1に、子供のいない家計を経済成長モデルに組み入れる点である。子供のいない家計の割合が増加することによる出生率の影響が大きいという観点から、実際に子供のいない家計の割合が上昇すると、経済全体での出生率が低下することを明らかにするとともに、子育て支援の影響も検討した。子育て支援により出生率が上昇した場合、労働供給の下落を通じた賃金率の上昇と子どもの数が上昇することによる社会保障制度の充実が見込まれることから子どものいない家計の効用も上昇しうることを明らかにした。 第2に、発展途上国などにみられる児童労働を禁止することが当該国の経済動学や地域間の人口配分に及ぼす影響などについても明らかにした。そこでは、早急に児童労働を禁止することが短期的な悪影響はあるものの、高い技術を用いた経済構造に転換し、経済成長を持続的にするためには不可欠であるということを示した。 研究分担者(内藤)の主要な貢献は以下の2点である。第1に、新型コロナウイルス発生後に日本では妊娠率が低下したことを明らかにした。具体的には、政府の自主規制の要請が妊娠率を5-8%低下させたこと、地域別に見れば、行動規制が強化された地域では妊娠率が2-3%ポイント低下したことを明らかにした。このように何らかのショックが生じると、短期的に妊娠率は大幅に変化する可能性がある。 第2に待機児童である。待機児童の問題は一部地域で改善も見られるが未だに女性労働を十分に活用できない要因の一つとなっている。そこで待機児童が特に深刻となっている都において、待機児童を減少させるような政策が経済全体にどのように波及して、どのような長期均衡をもたらすかについても議論した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者の伊ヶ崎は書籍にて研究成果を公表したほか、研究分担者の内藤も査読誌に論文を発表することができた。また研究分担者の松尾も、データの収集や先行研究のサーベイなどを通じて研究成果を発表できる段階まで来ている。それぞれが執筆中の論文をいくつかのジャーナルに投稿、もしくは投稿予定である。研究開始は2018年とコロナ禍以前であったため、研究開始においては予測できていなかったコロナ禍における様々な影響が、当該テーマに及ぼす影響についても一定の成果を出している。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、前年度までにそれぞれの分野において行われた研究の統合を試みる。現段階では、地域間の人口移動が都市ごとの出生率や短期・長期の経済成長に及ぼす影響、子どもの有無により都市に移住しようとするインセンティブがどのように異なるのか、児童手当などの金銭的は、子どもの数が異なる様々な家計の追加的な子どもを産むインセンティブや効用にどのような影響を与えるのか、待機児童の経済分析、コロナ禍における妊娠率の変化など一時的なショックなどについて研究してきた。 今後は、地域の数を増やしたり、より詳細なシミュレーション分析や計量分析を行ったりすることで、これまでに構築してきたモデルの妥当性やモデルで導出された結論の頑強性を確認する。これに加えて、コロナ禍における出生率の低下という短期的なショックが今後の地域社会の持続可能性に及ぼす影響についても検討していく。得られた成果は関連する国内外の学会(日本経済学会、RSAIなど)で報告し、欧文査読誌への投稿・公刊を行う。
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Causes of Carryover |
コロナ禍において国内外海外における学会やコンファレンスがオンラインとなるなど出張予定が大幅に変更になった。コロナ禍において、学会やコンファレンスが今後対面となるのかは不透明であるが、研究代表者・分担者の研究会や学会出張、および残された課題を遂行するためのコンピュータソフトの購入などに使用する予定である。
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