2022 Fiscal Year Research-status Report
規制産業における競争政策と社会的インパクトの計量分析
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18K01586
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
明城 聡 法政大学, 経済学部, 教授 (70455426)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 産業組織 / 競争政策 / 規制産業 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の成果物として、規制産業における競争政策と密接に関わる産業組織論の教科書「産業組織のエッセンス」を執筆・出版した。本書はミクロ経済学の基礎から企業戦略、そして競争政策までを全12章でカバーする産業組織の入門書となっている。第1章では、政府による競争政策と産業政策の歴史的な変遷を概観し、またそれらが産業組織の研究分野の発展とどのように関わってきたのか解説した。また、第2~5章では、産業組織論を理解するのに必須となるミクロ経済学の基礎(市場均衡やゲーム理論など)をコンパクトに説明した。特に数式やグラフなどを多用して初学者でも理解しやすい形にまとめている。また、以降の章では競争政策に関連した重要なトピックとして、カルテル(第6章)、企業結合(第7章)、市場画定と規制産業(第8章)、垂直的な取引関係(第9章)を取り上げた。これらの章では現在の競争政策で用いられている理論分析に加えて具体事例を取り入れ理解しやすいように工夫している。また、第9章では企業間取引の1形態として、近年の産業組織分野では重要な研究対象になっているプラットフォーム・ビジネスを取り上げ、その両側市場としての特徴と性質を解説した。また、そこでの競争政策上の現状の問題や課題について言及している。そして、第11章では企業の研究開発やイノベーション活動を取り上げ、それらが企業収益の源泉となる理論的なフレームワークを説明し、続く第12章ではこうした企業のイノベーションを保護するための特許制度の効果やあり方について論じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前項の研究実績で説明したように本研究課題の成果物として書籍を出版できた意義は大きい。具体事例として、本研究課題で取り組んでいるガス事業に関連したトピックや付随する過去の研究成果を盛り込んでいる。 また、本研究課題で取り上げるガス事業に関する研究テーマとして託送制度に関する動学推定があるが、こちらについてはデータ分析およびシミュレーションにおいて未解決の問題があるため一時中断した。そのため、上記の書籍出版を先行してすすめることとした。
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Strategy for Future Research Activity |
ガス事業に関するテーマについては引き続き、データ分析とシミュレーションを行い、論文執筆を行っていく。また、今後の研究テーマとして取り上げる別市場(予定としては住宅市場、自動車市場、ゲーム機市場など)についても資料およびデータ収集と予備的な解析を行う予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍における出張自粛やオンラインでの学会参加の増加等によって、旅費に相当する金額で差額が出ている。こちらについては、2023年度の出張旅費で使用する予定である。
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