2018 Fiscal Year Research-status Report
Regional Income Inequality in Asian Developing Countries under Globalization: A Study based on Household Income and Expenditure Surveys
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18K01589
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
秋田 隆裕 立教大学, 経営学部, 特任教授 (50175791)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片岡 光彦 立教大学, 経営学部, 特任教授 (20321713)
山田 恭平 立教大学, 経営学部, 特任准教授 (60710605)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 地域間格差 / アジア開発途上国 / 家計調査データ |
Outline of Annual Research Achievements |
1、1996年から2010年までの家計調査データを用いてインドネシアの家計間消費支出格差の推移を空間的な観点から分析した。都市農村間の格差は消費支出格差の約15-25%を説明しているが、それに対して県・市間の格差についてはその寄与度に関して都市と農村地域で異なる値を示していることが分かった。都市と農村の構造的な違いを考慮して2段階格差分解手法により県・市間格差の消費支出格差への寄与度を計測すると約15-25%になる。すなわち、都市農村間格差と県・市間格差を合わせると消費支出格差への総寄与度は約40%になる。2、2005年と2010年の全国家計所得消費データを用いてバングラデッシュの教育と所得格差に関する分析を行った。この研究ではまずバングラデッシュを都市と農村地域に分け、Gini係数により都市農村間と都市農村内の教育格差の分析を行った。教育をほとんど受けていない家計が2010年時点でも約半数おり、家計間の教育格差は依然高い。特に農村地域の無教育家計の比率は非常に高く、総教育格差を押し上げる要因になっている。一方、Blinder-Oaxaca手法による都市農村間の所得格差の分析によると、教育格差が都市農村間所得格差の主な要因になっている。したがって、初等教育の拡充と強化は所得格差是正のために重要な政策課題である。3、2005年から2013年までの州別・産業別の地域所得データを用いて2次元格差分解手法によりインドネシアにおけるサービス産業化と州間所得格差の分析を行った。この研究によると、州間所得格差の約70%から80%がジャワ・バリ地域内の州間格差により説明できることが分かった。また、ジャワ・バリ地域内州間格差寄与度が分析対象期間増加しているが、その多くはサービス産業、特に商業部門と交通通信部門の州間格差寄与度の上昇により説明できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度は研究プロジェクトの第1段階として、アジア経済研究所、世界銀行、国連大学世界開発経済研究所、アジア開発銀行、国際通貨基金などのホームページや研究代表者が所属する大学が契約している検索システム(EBSCOhost、JSTOR、Science Direct、Oxford Journals、Springer Link、Wiley Interscience Journalsなど)を用いて、地域間/都市農村間所得(消費支出)格差に関する最新の資料と学術的な文献の収集を行った。また、インドネシア、バングラデッシュ、ミャンマー、ブータンの最新の家計所得消費データの収集も行った。1、インドネシアの家計間消費支出格差の空間的な観点からの研究については、アジア開発銀行研究所のセミナーでその研究成果を発表し同研究所出版の本の中で公表した。また、Social Indicators Research誌にも修正バージョンを公表している。2、2005年と2010年の全国家計所得消費データを用いたバングラデッシュの教育と所得格差に関する研究については、その研究成果を学術雑誌(Review of Urban and Regional Development Studies)で公表した。また、バングラデッシュの研究で使われた手法と同様な手法を用いて、ミャンマーとブータンにおける教育と消費支出格差の分析も始めた。3、2005年から2013年までの州別・産業別の地域所得データを用いた2次元格差分解手法によるインドネシアにおけるサービス産業化と州間所得格差の研究については、7月に中部ジャワ州ソロで開催された国際会議(インドネシア地域学会)でその研究成果の一部を発表した。以上から、本研究は計画に沿って行っておりおおむね順調に推移している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度も30年度に引き続き、国際機関などのホームページやオンライン検索システムにより、地域間/都市農村間格差に関する資料と学術的な文献の収集を行う。また、インドネシアの国家開発計画庁(Bappenas)・統計局とタイの国家経済社会開発庁(NESDB)・統計局などを訪問し、インドネシアとタイの地域格差是正策に関する資料と最新の家計所得消費調査データなどを収集する。ミャンマー、ブータン、バングラデシュ、ネパールの最新の家計調査データも収集する。なお、ミャンマーについては2006年と2012年の家計所得消費調査データ(HIES)、ブータンについては2007年と2012年の生活水準調査データ(BLSS)、バングラデッシュについては2005年と2010年の家計所得消費調査データ(HIES)、ネパールについては2010年の生活水準調査データ(NLSS)を取得済みである。具体的な実証分析としては、第1に、バングラデッシュの研究で使われた手法と同様な手法を用いてミャンマーとブータンにおける教育と家計間消費支出格差の分析を行い、研究成果を公表する。第2に、2005年から2013年までの州別・産業別の地域所得データを用いた2次元格差分解手法によるインドネシアにおけるサービス産業化と州間所得格差の研究については、7月にタイのバンコックで開催される国際会議(Pacific Regional Science Conference Organization)でその研究成果を発表しワーキングペーパーとして公表する。第3に、2段階格差分解手法を用いたインドネシアにおける消費支出格差の空間的な観点からの研究については、期間を2010年代まで延長し分析を行う。
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Causes of Carryover |
(理由)平成30年度中にヴェトナムとフィリピンでの資料・家計調査データの収集を予定していたが、キャンセルになったためその部分の海外出張費がかからなくなったため。 (使用計画)今年度中にタイでの学会出席とタイの国家経済社会開発庁・統計局での資料・家計調査データの収集を計画している。ヴェトナムとフィリピンでの資料・家計調査データ収集については次年度以降計画している。
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