2019 Fiscal Year Research-status Report
Regional Income Inequality in Asian Developing Countries under Globalization: A Study based on Household Income and Expenditure Surveys
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18K01589
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Research Institution | International University of Japan |
Principal Investigator |
秋田 隆裕 国際大学, 国際大学研究所, 名誉教授(移行) (50175791)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片岡 光彦 立教大学, 経営学部, 特任教授 (20321713)
山田 恭平 立教大学, 経営学部, 特任准教授 (60710605)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 地域間格差 / 都市農村格差 / 貧困 / アジア開発途上国 / 家計調査データ |
Outline of Annual Research Achievements |
1、2007年と2012年の家計調査データを用いてブータンにおける教育と消費支出格差に関する分析を都市と農村間の構造的な違いを考慮して行った。この研究ではまずブータンを都市と農村に分け、ジニ係数により都市農村間と都市農村内の教育格差の分析を行った。60%以上の家計が学校教育を受けていないことから家計間の教育格差は非常に高い。特に農村地域の無教育家計の比率は非常に高く、総教育格差を押し上げる要因になっている。Blinder-Oaxaca手法による都市農村間の消費支出格差の分析によると、教育格差が都市農村間消費支出格差の主な要因になっている。したがって、農村地域における初等教育の拡充と強化は消費支出格差是正のために重要な政策課題である。消費支出格差は南アジアの中では高い水準にある。中高等教育の拡充は都市部における中高等教育を受けた家計間格差を高めており、総消費支出格差を高める要因になっている。2、2006年と2012年の家計調査データを用いて、ミャンマーにおける教育と消費支出格差に関する分析を都市と農村間の構造的な違いを考慮して行った。消費支出格差は大きく拡大しており、アセアン諸国の中では非常に高い水準にある。分析期間中の経済成長率は年率で10%超を記録しているが、この高成長は高所得家計に特に恩恵を与えており、これが消費支出格差を高める要因になっている。都市農村間の消費支出格差は非常に低く、都市農村内の消費支出格差の総消費支出格差に占める寄与度は95%になっている。また、都市と農村内における教育グループ間の消費支出格差も非常に小さく、教育グループ内の格差が総消費支出格差の90%を説明している。都市内の高等教育を受けた家計間消費支出格差は非常に大きく、また分析期間中大きく上昇している。総格差が拡大しているが、その主な要因は都市内の高等教育を受けた家計間消費支出格差の増加である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
世界銀行、アジア開発銀行などのホームページや検索システムを用いて、地域間所得格差や貧困に関する最新の資料と学術的な文献の収集を行った。また、インドネシア、バングラデッシュ、ブータンの最新の家計調査データの収集も行った。1、ブータンにおける教育と消費支出格差に関する研究成果は、国際学術誌Asia-Pacific Journal of Regional Scienceの2019年号に掲載された。2、ミャンマーにおける教育と消費支出格差に関する研究成果は、国際学術誌Regional Science Policy and Practiceの2019年号に掲載された。3、2005年から2013年までの州別産業別の地域所得データを用いたインドネシアにおけるサービス産業化と地域間所得格差の研究については、2019年7月にバンコックのチュラロンコン大学で開催された国際会議でその研究成果を発表した。研究成果は国際大学研究所のワーキングペーパーとして公表した。また、論文の最終バージョンは国際学術誌Social Indicators Researchに投稿し、現在査読者からのコメントに基づき修正を行っている。4、2001年から2012年までの毎年の地区別・収入項目別財政収入データを用いたインドネシアの財政収入格差分析については、その最終的な研究成果を国際大学研究所のワーキングペーパーとして公表した。また、論文の最終バージョンは国際学術誌Regional Science Policy and Practiceに投稿し、現在査読者からのコメントに基づき修正を行っている。5、本研究プロジェクトで用いられる研究代表者が開発した地域経済分析手法について2019年9月に久留米大学で開催された日本地域学会年次大会の特別セッションで発表した。以上、本研究は計画に沿って行われておりおおむね順調に推移している。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度も、国際機関などのホームページやオンライン検索システムにより、地域間所得格差や貧困に関する資料と学術的な文献の収集を行う。また、新型コロナウイルスのアジアでの感染状況次第であるが、インドネシアの国家開発計画庁、統計局やミャンマーの統計局などを訪問し、所得格差是正、地域間格差是正、貧困削減に関する政策についてのヒアリングと最新の家計調査データの収集などを行う。なお、ブータンの2017年の家計調査データ(BLSS)とバングラデッシュの2016年の家計調査データ(HIES)についてはすでに取得済みで、これらのデータは今年度以降の実証研究に用いられる予定である。具体的な研究は、以下の通りである。1、2000年代と2010年代の家計調査データを用いて、インドネシア、ミャンマー、フィリピンのアセアン3か国における教育拡充と消費支出格差に関する比較研究を行う。この研究では、社会経済構造の都市農村間格差を考慮した分析をジニ係数やタイル尺度の格差要因分解手法などを用いて行う。研究成果は、Springer社から出版される本(共同執筆)の中で公表される予定である。2、2004年と2014年の家計調査データを用いて、インドネシアにおける地域経済成長と貧困削減に関する研究を行う。この研究では、2004-2014年の期間における経済成長が貧困層に配慮したpro-poorな成長であったかをpro-poor growth indexやgrowth incidence curveなどを用いて州別、都市農村別に評価し、貧困削減のための政策提言を行う。3、2007年、2012年、2017年の家計調査データを用いて、ブータンにおける地域経済成長と貧困削減に関する研究をインドネシアの研究と同様の手法を用いて行う。上記2と3の研究成果はワーキングペーパーとして公表した後、国際的な学術誌に投稿する予定である。
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Causes of Carryover |
(理由)資料収集・家計調査データの収集のための海外出張(インドネシア)と2020年3月にハワイで開催される予定であった国際会議(Western Regional Science Association)が新型コロナウィルスの影響でキャンセルになったためその部分の海外出張費がかからなくなった。 (使用計画)新型コロナウイルスのアジアでの感染状況次第であるが、インドネシアの国家開発計画庁、統計局やミャンマーの統計局などを訪問し、所得格差是正、地域間格差是正、貧困削減に関する政策についてのヒアリングと最新の家計調査データの収集などを行う予定である。
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Research Products
(6 results)