2021 Fiscal Year Research-status Report
Regional Income Inequality in Asian Developing Countries under Globalization: A Study based on Household Income and Expenditure Surveys
Project/Area Number |
18K01589
|
Research Institution | International University of Japan |
Principal Investigator |
秋田 隆裕 国際大学, 国際大学研究所, 名誉教授(移行) (50175791)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片岡 光彦 立教大学, 経営学部, 教授 (20321713)
山田 恭平 国際大学, 国際関係学研究科, 教授(移行) (60710605)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 地域間格差 / 都市農村格差 / 貧困 / アジア開発途上国 / 家計調査データ |
Outline of Annual Research Achievements |
1、2007、2012、2017年の家計調査データを用いて、ブータン農村地域の経済成長と貧困削減に関する分析を行った。また、操作変数プロビットモデルを用いて、貧困の要因分析も行った。ブータンの貧困率は、南アジア諸国の中では比較的低い水準にある。しかし、都市の貧困率が1%程度に対して農村では12%と都市農村間で大きな格差が存在する。農村地域の貧困削減には、水力発電や観光産業からの副次的な収入による成長だけではなく農業をベースにした小規模産業による成長促進が必要である。また、農村における教育水準は非常に低く、基礎的なインフラ整備と共に義務教育のさらなる拡充が必要である。2、2010から2020年までの産業別地域所得データを用いて、2020年2月から急増している新型コロナ感染症がインドネシアの地域間所得格差にどのような影響を及ぼしているかを変動係数による二次元格差分解手法を用いて分析した。ホテル産業、運輸業などの観光産業への依存度が高い州ではパンデミックにより地域経済が大きな打撃を受けており地域総生産は大きく減少した。一方、農林水産業への依存度が高い東インドネシア地域ではあまり影響を受けておらず、影響度に関して地域間で大きな格差が存在する。また、情報通信業や金融関連業はパンデミック下でも引き続き高い成長を記録しており、これらの産業は地域間格差の主要な要因になっている。3、家計調査データを用いて、インドネシアとフィリピンにおける教育と消費支出格差に関する比較研究を都市と農村間の構造的な違いを考慮して行った。教育水準が都市農村間消費支出格差の大きな要因になっており、都市農村間教育格差を縮小させることは総消費支出格差縮小のために有効である。また、都市部の高等教育を受けた家計間消費支出格差が大きく、大学など高等教育機関の質的な格差是正も総消費支出格差を是正するために必要である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
世界銀行やアジア開発銀行などのホームページや各種のオンライン検索システムを用いて、所得格差や貧困に関する最新の資料と文献の収集を行った。研究成果の公表については以下のとおりである。1、家計調査データを用いたインドネシア、フィリピン、ミャンマーのASEAN3か国における教育と消費支出格差に関する研究成果は、2021年6月にSpringer社から出版された本(Rural and Urban Dichotomies and Spatial Development in Asia)の中で掲載された(Chapter 6)。2、2001年から2012年までの地区別・収入項目別財政収入データを用いたインドネシアにおける財政収入格差要因分析の成果は2021年12月に国際学術誌Regional Science Policy and Practiceに掲載された。3、2007、2012、2017年の家計調査データを用いたブータン農村地域における経済成長と貧困削減に関する研究の成果は、国際大学研究所のワーキングペーパーとして公表した。また、2022年中に、国際学術誌Journal of the Asia Pacific Economyにonline first articleとして掲載される予定である。 本研究プロジェクトの研究成果をベースに本の執筆を進めており、2022年中にSpringer社からRegional Inequality and Development: Measurement and Applications in Indonesiaというタイトルで出版する予定である。 新型コロナウィルスの感染拡大により2021年度も国際会議での研究成果の発表やアジア諸国での調査研究ができなかったが、本研究は計画に沿って行われており、おおむね順調に推移している。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度も世界銀行やアジア開発銀行などのホームページや各種のオンライン検索システムを用いて、所得格差や貧困に関する資料と文献の収集を行う。新型コロナウイルスのアジアでの感染状況次第であるが、インドネシアやフィリピンなどを訪問し地域格差是正に関する政策についてのヒアリングと最新の家計調査データの収集を行う。また、インドネシアとマレーシアで開催される予定の国際会議で研究成果を発表する。具体的な研究としては以下を予定している。1、1997、2000、2006、2012、2018年の家計消費支出調査データを用いてフィリピンにおける教育と消費支出格差の分析を都市と農村の構造的な違いを考慮して行う。この研究では、ジニ係数を用いて都市農村間の教育格差分析を行った後、タイル尺度の二段階分解手法を用いた消費支出格差の要因分析を行う。2、2005、2010、2016年の家計所得支出調査データを用いて、バングラデッシュにおける教育と所得格差の分析を、フィリピンの研究と同様に都市と農村の構造的な違いを考慮して行う。ここでは、Blinder-Oaxaca手法を用いた都市農村間の所得格差の要因分析を行う。3、2010年から2020年までの州別産業別の所得データを用いて、インドネシアにおける産業構造変化と地域間所得格差の分析を行う。この研究では、製造業に特に焦点を当て、製造業内の構造変化が地域間所得格差にどのような影響を及ぼしているかを、二次元格差分解手法を用いて分析する。また、新型コロナウイルの感染拡大が地域間所得格差にどのような影響を及ぼしているかも引き続き分析する。以上の研究成果はまずワーキングペーパーとして公表した後、国際学術誌に投稿する予定である。
|
Causes of Carryover |
(理由)新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、予定していた国際会議が中止かオンライン会議になったためその部分の海外出張費がかからなくなった。 (使用計画)新型コロナウイルスのアジアでの感染状況次第であるが、インドネシアの国家開発計画庁(Bappenas)やフィリピンの国家経済開発局(NEDA)などを訪問し、所得格差是正に関する政策についてのヒアリングと最新の家計調査データや地域所得データの収集などを行う予定である。7月にインドネシアで開催されるインドネシア地域学会と8月にマレーシアで開催される東アジア経済学会で研究成果を発表する予定である。また、パーソナルコンピュータの周辺機器やレーザープリンターのカートリッジなどを購入する予定である。
|
Research Products
(4 results)