2019 Fiscal Year Research-status Report
The impacts of Trade Liberalization Policy through the Domestic Supply Chain in Japan
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18K01590
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
横田 一彦 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (40390819)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | サプライチェーン / 付加価値貿易 / 貿易構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度(2018年度)に引き続きサプライチェーンを通じた貿易構造の変化をアジア,北米,ヨーロッパの3地域を対象に,付加価値貿易と中間財貿易構造の違いを明らかにする実証研究を進展させた。OECDのInter-Country Input-Output (ICIO)をもとに計算された中間財貿易指数と付加価値貿易指数が国際間の賃金格差,経済規模,物理的距離,共通言語や,宗主国関係の有無,自由貿易協定の有無といった要因にどの程度影響を受けているかを推計した。昨年度からの進歩としては付加価値貿易の構成要素である資本をコントロール変数として推計に含めている点が一つ挙げられる。操作変数法,ポアソン回帰モデル,動学的一般化積率法,システム一般化積率法によって推計した。動学的一般化積率法を採用した理由は,付加価値貿易もグロスの中間財貿易も履歴効果が働くため,前年からの実績に強く影響されるためである。さらに,動学的一般化積率法は操作変数にラグ付き内生変数を使用できるという特徴がある。その結果はこれまでの結果と大きくは変わらず,1.アジアとヨーロッパの最も顕著な違いはアジアでは賃金が安い国ほど中間財も付加価値も輸出している。2.アジアでは中間財と付加価値貿易の賃金水準と賃金格差の弾力性の値の差がヨーロッパのそれに比べて大きい→アジアでは絶対的な賃金水準と賃金格差が中間財貿易に与える影響に比べ,付加価値貿易を増大させる効果が小さいといった顕著な特徴がみられた。これらのことから付加価値貿易で見るとアジアではヨーロッパに比べより垂直的な産業構造があると考えられる。 また,付加貿易から導かれる指数を計算して,全世界のサプライチェーンの進展と労働市場の変化,特に雇用の空洞化に焦点を当てた研究を開始した。 これらの結果を2020年度にはワーキングペーパーにまとめ,海外学会で発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度からの進捗として,付加価値貿易の構成要素として各国の産業別資本のデータを入手し,それを推計に含めることにした点,推計方法に操作変数法,ポアソン回帰モデル,動学的一般化積率法,システム一般化積率法を含めた点が挙げられる。まだ最終的な結果は得られていないが,当初のサプライチェーンを通じたアジア地域の貿易構造はEUや北米のそれとは異なり,賃金格差を利用した垂直的な貿易構造を持っているという仮説は支持されそうである。 今後この結果をワーキングペーパーにまとめる予定である。また,付加貿易から導かれる指数を計算して,全世界のサプライチェーンの進展と労働市場の変化,特に雇用の空洞化に焦点を当てた研究の準備を開始した。
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Strategy for Future Research Activity |
アジア,EU,北米の貿易構造の変化に関する研究は2020年度中に国際学会で発表を予定していたが,予定していた国際学会(East Asian Economic Association)が新型コロナウィルスの影響で2021年度に延期になった。そこで2020年度中の学会発表はほかに予定していなかったが,かわりに学内外のワークショップで発表したいと考えている。 サプライチェーンは言い換えればオフショアリングの一形態であり,オフショアリングが進展すれば必然的に国内の雇用状況は変化する。一般に産業の空洞化と呼ばれる現象である。そこで2020年度にはサプライチェーンがもたらす労働市場の変化を世界60か国のデータを使用して明らかにする予定である。その際に使用するサプライチェーンを表す指数としてHelpman (2018)のVAX指数を用いる予定である。この指数の優れている点は付加価値がどれだけ自国から海外に流出したかを測ることができる点にある。 参考文献 Helpman, Elhanan (2018). Globalization and Inequality. Harvard University Press.
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Causes of Carryover |
予定していた国内学会出張が新型コロナウィルスの影響で中止になったため。繰越金を英語論文の英文校正費用に充てる予定である。
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