2021 Fiscal Year Annual Research Report
Challenges to East Asain macroeconomic and financial staability in changing global economic environment
Project/Area Number |
18K01610
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
金京 拓司 神戸大学, 経済学研究科, 教授 (50527637)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | システミックリスク / 預金保険 / アジア通貨市場 / アジア株式市場 / 確率ボラティリティモデル / ウェーブレット解析 / 人民元 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、国際経済環境の変化が、東アジア新興国のマクロ経済や金融システムの安定性に及ぼす影響について包括的に検証することを目的としており、(1)機械学習の手法を活用したより精度の高い危機発生予測モデルの構築、(2)海外からの金融ショック波及などが銀行システムに及ぼす影響の銀行財務データを活用した分析、(3)東アジア地域金融協力を取り巻く状況や金融協力推進に向けての課題の分析などを行う。これらのうち令和3年度は、主に(2)と(3)に重点を置いた取り組みを行い、研究成果を3本の論文にまとめ、査読付国際学術誌に掲載された。第一の論文では、銀行の預金保険制度がシステミック・リスクを軽減させる効果は、リスクの原因によって異なること明らかにした。すなわち、預金保険制度は、銀行固有の要因などを原因とするリスクについては、モラルハザードの助長等を通じてむしろリスクを増幅させる可能性がある一方で、銀行に共通なマクロ経済状況や銀行間ネットワークを通じた相互依存性に関連したリスクについては、預金保険のカバレッジ率とリスク軽減効果の間にU字型の関係が見られ、最適なカバレッジ率が存在し得ることを示した。第2の論文では、東アジアにおける株式市場と通貨市場の収益率・ボラティリティに関する相互依存関係に焦点を当て、それぞれの市場における域内連動の強まりに、両市場間のクロス連動の水準が重要な役割を果たすことを示した。第3の論文では、人民元のアジアにおける影響力の高まりについて、多変量ファクター確率ボラティリティモデルと連続ウェーブレット変換からそれぞれ推定される偏相関係数とパーシャル・ウェーブレット・コヒーレンスを用いて分析を行い、アジア通貨相互の連動において、中国人民元との連動を通じた間接的な連動が大きな役割を果たしていることを明らかにした。
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