2020 Fiscal Year Research-status Report
Inequality of health and living standards in Russia: a microeconometric approach
Project/Area Number |
18K01612
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
武田 友加 九州大学, 基幹教育院, 准教授 (70376573)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 所得格差 / 地域間格差 / 雇用 / 失業 / ウェルビーイング / COVID-19 / ロシア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主な目的は,ロシアの格差を多面的に分析することから,計画経済から市場経済への移行の中で急激に高まった格差に対し,是正のための解決策を探ることである。かねてより,一人当たりG D Pで国民経済の豊かさを把握しようとすることの限界については,しばしば指摘されてきたことであるが,とりわけ,2009年のスティグリッツ・セン・フィトゥシ報告以降,人々の暮らしをより適切に把握する指標への関心が強まり,家計の視点の重視,所得・支出・資産の分配,所得の計測範囲の拡大など,多元的にウェルビーイング(豊かさ)を捉える必要性が叫ばれている。令和2(2020)年度は,これらの視点を踏まえ,ロシア長期モニタリング調査(ロシア全国レベルの大規模家計調査)の個票データ(ミクロデータ)を用いてロシアの都市と農村を比較することから,ロシア国民のウェルビーイングをより多角的に捉えることを試みた。本分析では,所得・支出面では,都市住民と比較し,ロシア農村住民のウェルビーイングは確かに著しく劣るが,他者との関係や心身の健康面のウェルビーイングは相対的に高いことを確認した。その他,コロナ感染症拡大下のロシアにおける就業と失業の変化について,その実態を調査した。コロナ禍により,ロシアでも失業増大,所得減少がみられる一方で,政府による低所得層の生活水準の下支えもあり,結果として,全体としては所得不平等を縮める方向への作用が見受けられた。ただし,このような格差縮小は豊さに起因するものではなく,格差縮小の望ましい形とはいえないと考えられる。以上の研究成果の一部は学術誌や研究図書に所収された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究成果の一部を研究論文として発表した。以上の点から,本研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ感染症拡大の影響を受け,R2(2020)年度に引き続きR3(2021)年度も,ロシアへの出張の中止を余儀なくされると考えられる。状況が許せば,現地感覚と実証分析の結界に大きなズレがないかどうかを調べるために,現地出張を実施する。また,R3(2021)年度も本研究で実施してきた実証研究に肉付けをし,学術誌に投稿することを目指す。
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