2022 Fiscal Year Annual Research Report
Inequality of health and living standards in Russia: a microeconometric approach
Project/Area Number |
18K01612
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
武田 友加 九州大学, 基幹教育院, 准教授 (70376573)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 貧困 / 生活保護 / 生活水準 / 健康 / 家計調査 / ウェルビーイング / ロシア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,ロシアの格差を多面的に分析することから,計画経済から市場経済への移行の中で急激に高まった格差に対し,是正のための解決策を探ることである。2009年のスティグリッツ・セン・フィトゥシ報告以降,人々の暮らしをより適切に把握する指標への関心が強まり,家計の視点の重視,所得・支出・資産の分配,所得の計測範囲の拡大など,多元的にウェルビーイング(豊かさ)を捉える必要性が叫ばれている。本研究はこのような国内外の潮流を踏まえた,数少ないロシアのウェルビーイングの実証分析の一つである。 初年度と第二年度は,重点的にロシアの生活保護制度について調査・研究した。ロシアの生活保護制度の基盤はロシア国家社会扶助法であり,格差是正がその目的の一つとされる。本研究では,2012年に導入された社会契約と呼ばれるワークフェアが,貧困家計の貧困脱出に与える影響について因果推論を試みた。ワークフェアの貧困削減効果に関する実証研究は,ロシアの貧困研究ではほとんど見られず発展途上の研究課題であり,本研究はその第一歩と考えられる。 第三年度と第四年度は,ロシアの都市と農村を比較することから,ロシア国民のウェルビーイングをより多角的に分析した。構造方程式モデリング等を用いて,農村住民のウェルビーイングは,所得・支出面では都市住民と比べて著しく劣るが,他者との関係や心身の健康面は相対的に高いこと,また,主観的生活水準は,所得水準そのものよりも,心身の健康のほか,エンパワーメントの影響が大きいことなどを明らかにした。 最終年度では,上記分析における対象期間をさらに延ばすほか,推計方法も改善し,分析結果の頑健性を検証することを試みた。ロシアによるウクライナ侵攻により,研究予定を大幅に遅らせることになったが,本研究期間終了後に研究成果を発表できる予定である。
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