2020 Fiscal Year Research-status Report
複数市場に財を供給する公企業の部分民営化政策についての研究
Project/Area Number |
18K01613
|
Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
川崎 晃央 大分大学, 経済学部, 准教授 (10452723)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 民営化 / 価格戦略 / 複数市場競争 / 複数財生産 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は価格戦略と民営化政策について,代替財のケースだけではなく補完財のケースについても研究を進めた.その結果,代替財の場合は収穫逓減で代替性が小さいケースでは完全公営下での均一価格が望ましくなるが,補完財の場合は費用関数の形状に関係なく,補完性が小さい場合には部分民営化の下での均一価格が望ましくなることを明らかにした.以上の研究成果については現在,査読付き雑誌に投稿中となっている. 次に,民営化がすすめられている国際ハブ空港での価格戦略に注目し,国内線と国際線のairport pricingについて研究を進めた.その結果,地方空港の数が多い場合は価格差別,そうでなければ均一価格が選ばれることを明らかにした.以上の研究は査読付き雑誌に掲載された. 次に,タイミングゲームと民営化にかかわる研究を進め,単一市場を仮定しているが,私企業が国内企業であれば,私企業先手とする部分民営化が実現するが,外国私企業の場合は,公企業先手とする完全公営が実現することを明らかにした.本研究は現在,査読付き雑誌からの修正要求に対応中である. 最後に,公企業が複数財を生産している場合の長期均衡についての研究を実施した.これは2019年度に複数財を生産する公企業の民営化政策の研究を拡張したものである.その結果,公企業が生産する財の種類が増加すると,私企業の参入を押さえつける効果が発生し,長期均衡では過小参入が生じるケースが存在することを明らかにした.また,民営化政策については,全体の参入費用を減らすために,民営化しない方が望ましくなることを明らかにした.以上の研究は査読付き雑誌に掲載されることが決まっている.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は,複数市場競争下で価格競争を行っている状況を前提とした市場についての研究を進め,空港の価格戦略に関する論文を公刊することが出来た.また,複数財を生産している公企業が存在する市場を前提とした長期均衡についての研究を進め,論文の公刊に至った. 一方で,価格戦略と民営化を同時に考慮した研究論文については査読付き雑誌より2度目の修正要求があったため,指摘のあった部分を修正し現在再投稿・再査読を受けている.この研究については,査読が長引いているため若干遅れ気味である.また,当該研究を拡張した研究論文については,学会報告後の修正に時間を要したため,予定より2か月ほど遅れて専門雑誌に投稿したところである. 以上のように,一部の研究論文で遅れが出てはいるが,専門雑誌に投稿,再投稿する段階まで進んでいることから,大きな遅れとは言えず,おおむね順調に進展していると判断できる.
|
Strategy for Future Research Activity |
価格戦略に注目した民営化政策にかかわる研究論文を公刊させることが最優先である.現在,再査読を受けている論文と査読を受けている論文がそれぞれあることから,それらの査読結果が届き次第,必要な修正を施し,公刊させる予定である. 次に,複数の市場に財・サービスを供給する場合,ネットワークのような設備を必要とするケースが存在することに注目し,垂直的取引関係が存在する場合の民営化政策にかかわる研究に着手する.例えば,電力産業の場合,送電網の部分は独占であることが多く,そのような部門では民営化の必要性が全く議論されていない. 従来の研究は,ボトルネックの部分のアクセス料金の規制に関する議論が多かったため,今年度は,従来型のようなアクセス料金の規制の議論ではなく,競争政策の面から見た民営化の可能性について研究を進めていく予定である.
|
Causes of Carryover |
前年度は新型コロナウイルスの影響により,学会がすべてオンライン開催となったため,旅費の支出がゼロとなった.そのため,当初予定より残高が多く残った. 今年度は前半は引き続きオンラインによる学会開催が予定されているが,後半は出張による学会への出席が予想されることから,旅費の支出が生じる予定である.同時に,複数の研究会への参加も予定しており,これらの出張への支出に回す予定である. 次に,現在複数の論文を査読付き英文雑誌に投稿し,また新たな論文も投稿予定である.これらの論文の英文校正が必要になることから,英文校正への支出が,今年度も引き続き予定されている.
|
Research Products
(4 results)