2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K01623
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Research Institution | Osaka University of Economics |
Principal Investigator |
小巻 泰之 大阪経済大学, 経済学部, 教授 (80339225)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
濱田 武士 北海学園大学, 経済学部, 教授 (80345404)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 地元出資型売店 / 小地域データ整備 / 売上高損益分岐点 / EBPM |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年以降の本土及び沖縄県での共同売店の実地調査に加え,2018年度は共同売店の維持可能性を検討する材料として,イギリスの共同売店への実地調査を行った. イギリスについては,特に,地元出資型売店(Community Shop)として自主的な努力を実施している売店を訪問した.たとえば,Gartmore Community Shop(Stirling, Scotland)では地元住民による主体的な売店利用を強制的ではないが村の店の将来のために1週間に最低5ポンド(日本円で約730円,19年4月末時点)の購入を求めているなど,かなり強い勧奨を進めている.算出根拠は損益分岐点を算出の上,地域住民の人口および1年間を52週間で除して算出された数値とのことである. また,他の売店では価格転嫁について合理的な検証を行っている. Feckenham Village Shop(Redditch, Oxfordshire)では近隣の大型スーパーで購入する場合の移動コストを計算して,売店の方が安く購入できることを数値で示している.具体的には,自動車1マイル当たりの維持コストを算出し,自動車の1マイル(約1.6㎞)を0.55ポンド(日本円で約80円)と見込んでいる.この移動コストを加算して近隣のスーパーマーケットでも購入できる一般的な購入品目(バスケット)をもとに比較を行っている.これによればスーパーマーケットであるSainsbury’sで4.97ポンド(日本円で約725円)など,個々の商品の価格は大型スーパーマーケットより割高であるものの,移動コストを考慮すれば必ずしも高くないことを示している. このような状況を日本の共同売店に適用できないかを検討した結果を学会報告した.また,沖縄国際大学南島文化研究所での叢書の一章として原稿を執筆しており,成果は2020年3月に刊行予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究プロジェクトでは補助期間に6つの研究課題を掲げている.その内,住民出資型売店の活動状況の比較検討については,イギリスの特徴的な共同売店への実地調査を行なった.特に,イギリスの共同売店での取り組みの日本での適用可能性について日本版の試算を行い,その成果を学会報告した.また,住民出資型売店の維持可能性に関する検討として住民出資型売店の経営状況を財務諸表的に数値化するためのデータ整備を行った.そのデータを用いて本土と沖縄との比較検討を行なった.その中で,共同売店の研究について相談していた連携研究者の村上了太教授(沖縄国際大学)から同大学の南島文化研究所での叢書事業への参加を打診され,叢書の一章として原稿を執筆することとなった.その内容は,上述の共同売店にかかる統計データによる実証的な分析を含むものである.成果は2020年3月に刊行予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は2018年度に打診のあった叢書作成を行う.また,本研究の課題である「所得変数及び消費動向に関するデータ整備」を続ける.特に,鹿児島県奄美大島の共同売店の場合,同じ沖縄県(離島)と比較してインフレ整備面で明らかに劣位な状況にある.そのような中で共同売店として維持されている状況及び住民の消費動向について調査ができないかと考えている. さらに,イギリスの共同売店について昨年度に引き続き実地調査を行う.2019年度は特徴的な共同売店を横断的に調査したが,今年度はイギリス南部地域を重点的に実地調査し,経済環境,地理的・歴史的環境の違いが共同売店の経営に影響を与えているのかを検討する予定である.その中で,損益分岐点売上高をもとに,住民による商品購入必要額を推計したい. また,追加的な課題として,地方におけるEBPMの実施状況を検討する予定である.これは2019年1月に明らかとなった中央省庁での統計不正問題である.地方の実質的な統計事情とEBPMの実施の適格性についても検討を加えたい. これらの成果の一部は学会(地方部会も含む)にて成果報告を行いたい.
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Causes of Carryover |
次年度に向けて28930円が未使用となった.これは現地調査の出張旅費としてはかなり少額であるため,次年度に合わせての利用の方がより的確に研究費が使用できると考え,次年度使用とした. 2019年度は6月に鹿児島県奄美大島,9月にイギリス南部地域への現地調査を予定している.共同売店の現状に関するデータ収集に努め,経済環境の一般化を図りたい.また,地方におけるEBPMの状況調査については島根県庁,北海道庁(研究分担者との調査)も考えている.
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Research Products
(3 results)