2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K01623
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Research Institution | Osaka University of Economics |
Principal Investigator |
小巻 泰之 大阪経済大学, 経済学部, 教授 (80339225)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
濱田 武士 北海学園大学, 経済学部, 教授 (80345404)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 小地域データ整備 / 新型コロナ感染症の拡大 / 旅行需要 / EBPM / 経営形態の回帰 |
Outline of Annual Research Achievements |
(過疎地域におけるコロナの影響)沖縄県国頭郡国頭村与那地域を訪問時に,大城靖区長と面談し,地区の高齢者が新型コロナ感染症の拡大で,外出を抑制する習慣が身につき,感染症が落ち着きをみせた後も外出する習慣が取り戻せない状況にあるとのことである.WHILL株式会社の調査(2023)によれば,「外出機会が増加すれば、社会参加に前向きになれる」と回答者の90%程度が支持している.新型コロナ時における旅行支援策の効果を検証したところ,旅行支援は高齢者にはあまり効果はなく,外出を促進するものではなかったといえる. (コロナの影響と共同売店)新型コロナ感染症の拡大は,集落における消費者の地元を優先して消費するスタイルが高まり,小規模商業施設の業況は悪化していない.経営形態については,集落直営方式への回帰は昨年度と同様に続いている.他方で,金武町で最も新しい共同売店が開店している.金武町は大型スーパーの出店もみられ,商業施設は多いものの,アップダウンが大きな街であり高齢者の要望もあって開店したとのことである.この点では,共同売店の存在価値は未だに認められている. (定住・移住に関する状況) 多くの市町村では域内社会経済環境の維持発展を目的として定住・移住政策を実施している.しかし,定住移住政策の効果に関する先行研究は,個々の成功あるいは失敗の事例紹介的なものが多く,政策効果を定量的に把握したものは多くない.定住移住政策の実施状況について,市町村への情報収集をおこない,個々の政策効果について定量的な検証をした.定住・移住者向けの支援制度では,それぞれの市町村で個々の支援策の実施状況に大きな差異はない.しかし,市町村における移住者の受け入れ体制の違いにより,移住者の増減で大きな差異が確認できる.たとえば,移住相談で専任職員が配置されていること,4年以上継続している担当者がいることが有意である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度は,国内での実地調査を中心に進めた.市町村への共通フォーマットによる調査を追加的に始めた.これは,当初の研究計画で所得変数の検討を行う予定であったが,そのオルタナティブデータの1つとして検討している. 住民出資型売店については,地域の客観的データの海外との比較もある,イギリスの共同売店での取り組みは,日本での適用可能性について日本版の試算を行った.その内容は,共同売店にかかる研究成果にも反映させる.
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は本研究の最終年度である.日本ではこれまで人口1億人維持を目標として政策が取り組まれている.他方で,地域においても域内人口の維持が目標とされ種々の政策が実施されていきている.しかし,国立社会保障・人口問題研究所による最新の将来推計人口(2023年4月26日公表)によれば,外国人の人口の見積もりを上方改定することで,総人口が1億人を割り込む時期は,前回推計の2053年から56年に3年遅くなっている.現時点では地域に関する推計結果は公表されていないが,地域の状況はさらに悪化していることが想定される.地域の中では,人口の急減により社会基盤を維持することがより困難となってくる.この中で地域では,人口維持への目先の資金的支援策に傾倒するのではなく,持続可能な対策を検討すべきと考える. そこで,最終年度では同様に過疎化が進む先進国でどのような地域政策が実施されているのかを調査する.本研究で訪問したイギリスの地域を再訪し,日本での市町村で行った同様の質問票への回答を得るように努める.その上で,比較可能な項目から,日英両国の相違について検討を進める.
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Causes of Carryover |
2022年度は国内の市町村を中心に調査を進め,それを分析してきた.このような状況は過疎化にある他国の状況と比較検討できないかと考えている.しかし,新型コロナ感染症が収束を迎える前であり,海外への渡航についても厳しい制約があったため,延期せざるを得なかった. 2023年度は,イギリスへ訪問する予定である.イギリスの地方行政区分をもとに,ロンドンから離れている地域の行政区及び商業施設へ日本の市町村におこなった質問票と同等のものを実施する予定である.
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Research Products
(3 results)