2018 Fiscal Year Research-status Report
再生可能エネルギーによる発電が電力市場に及ぼす影響に関する研究
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18K01626
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Research Institution | Musashi University |
Principal Investigator |
松川 勇 武蔵大学, 経済学部, 教授 (50287851)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | メリットオーダー効果 / 市場支配力 / カーボンプライシング / フィードインプレミアム |
Outline of Annual Research Achievements |
再生可能エネルギーによる発電が電力市場の経済効率に及ぼす影響を明らかにするため、既存の経済理論を検討し、分析用のモデルの開発に着手した。具体的には、文献調査をもとに再生可能エネルギーによる発電を対象とした内外の分析事例の調査を行うとともに、プロトタイプの経済モデルを開発した。文献調査では、太陽光発電および風力発電を対象とした最近の経済分析の事例を中心とし、再生可能エネルギーの進展に伴う電力市場の価格低下(メリットオーダー効果)に関する知見を得た。たとえば、ドイツでは風力発電・太陽光発電の百万キロワットの導入によって、電力価格が1.8~4.4%低下した点が指摘されている。また、メリットオーダー効果を検討する際には、卸電力市場における市場支配力の影響について考慮する重要性も明らかになった。 プロトタイプの経済モデルについては、Acemogluらの経済理論をもとに卸電力取引・先渡し契約・再生可能エネルギー投資の3段階の意思決定を明示的に分析する手法を開発した。また、再生可能エネルギーの普及を目的とした経済政策として、カーボンプライシング・フィードインタリフ・フィードインプレミアムの3種類の政策を取り上げ、これらの政策が社会厚生に及ぼす影響を分析した。 今年度の研究で取り上げた経済政策はいずれも重要であるが、なかでもカーボンプライシングおよびフィードインプレミアムは現在わが国において導入が検討されているものであり、その影響を明らかにすることは学術研究のみならずエネルギー政策の立案においても意義がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度までに文献調査を実施し、分析用のモデルのプロトタイプの開発を進めることを予定していたところ、文献調査を完了するとともにプロトタイプの経済モデルの開発が完了したため、「おおむね順調に進んでいる」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
プロトタイプの経済モデルを改良して、再生可能エネルギーによる発電を含めた卸電力取引の経済モデルを構築し、再生可能エネルギーによる発電の費用構造および立地特性が卸電力取引および電力価格に及ぼす影響を明らかにする。具体的には、複数の寡占企業と多数の再生可能エネルギー発電事業者を想定した卸電力市場において、化石燃料による発電と、風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギーによる発電の2種類を想定し、電力取引を分析する。 また、風力発電や太陽光発電における出力変動を確率分布を用いて表現し、異なる立地点間の相関を考慮して再生可能エネルギーの立地特性が電力市場に及ぼす影響を分析する。その際、Acemogluらの手法を適用し、complete、cycleなどの立地パターンに応じて発電設備間の相関行列を想定し、卸電力取引・先渡し契約・再生可能エネルギー投資の3段階に区分して分析を行う。さらに、卸電力市場の価格変動についても分析を行い、再生可能エネルギーが価格リスクに及ぼす影響について明らかにする。 再生可能エネルギーの普及を目的とした経済政策については、カーボンプライシング・フィードインタリフ・フィードインプレミアムの3つを取り上げ、分析モデルを用いて電力市場に及ぼす影響を明らかにする。また、化石燃料による発電から排出される二酸化炭素などの温室効果ガスに関連する外部不経済を考慮したうえで、3種類の経済政策が社会厚生に及ぼす影響を比較して社会厚生の観点から望ましい政策の評価を行う。
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Causes of Carryover |
学会と合わせて再生可能エネルギー関連の現地調査を予定していたが、所属機関での業務の都合上実施できなかった。次年度以降に実施する学会参加に合わせて調査を行う予定なので、その旅費として使用する計画である。
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