2019 Fiscal Year Research-status Report
将来の経済状況を考慮した企業の合併・イノベーション戦略と競争政策
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18K01627
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
海老名 剛 明治大学, 商学部, 専任准教授 (00579766)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 企業結合 / 合併 / 競争政策 / ゲーム理論 / リアル・オプション |
Outline of Annual Research Achievements |
研究目的は,経済状況を考慮し,企業の最適な1.合併戦略,2.イノベーション戦略,そして政府の3.競争政策を明らかにすることである.研究成果は,下記の6本の論文を執筆して投稿したことである. まず,"Sequential Mergers and Competition Policy under Partial Privatization"を執筆・投稿し,国際学術雑誌Australian Economic Papersに掲載された.本論文では,差別化された財を生産する企業が,動学的な状況下で,なるべく類似した企業と合併するインセンティブを持つこと,そして,それにより逐次合併が起こることを示した(1,3).合併回数が増えるほど,厚生が改善する可能性がある点を示した. 次に,"Hostile Takeovers or Friendly Mergers? A Real Option Analysis"を執筆し,国際会議INFORMS Annual Meeting 2019で報告した(1,3).日本経済学会でも報告が決まっていたが,台風のため,報告中止となった.同論文では,リアル・オプション理論の連続時間モデルを利用し,異なる不確実性に直面する企業が,敵対的買収と友好的合併のいずれをどのタイミングで選択するかについて,明らかにした.特に,現実でよく観察される小規模企業が大規模企業に対して敵対的買収を行う点を理論的に示し,そのパラメータレンジを求めた(1,3). 上記以外に,1から3と関連して,プロセスイノベーションと製品差別化戦略,自動運転と社会政策,意思決定サポートシステム,そして需要の不確実性下での差別化戦略の計4本の論文を執筆し,国際学術雑誌に投稿している.これらの研究では,主としてイノベーションに焦点を当てている.意思決定サポートシステムの研究については,改訂要求を受けている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね順調に進展している.その主な理由として,学術雑誌に1本論文が掲載された点,別論文を国際会議で報告した点,投稿中の論文が計4本ある点が挙げられる.詳細な理由については,下記の2点の通りである. まず,前年度に計画していた確率微分方程式を用いた動学モデルのサーベイ,理論モデルの構築とシミュレーションにより解を求める,という主要な目的を達成できた点が挙げられる.ただし,合併分野以外の分野(例,イノベーション,製品差別化,立地,リポジショニング,政策等)に用いるためには,他の分野の先行研究のサーベイや新たな手法の獲得が必要となるため,この点については,引き続き,次年度も継続して研究を進める. 次に,イノベーション戦略については,前年度に計画した機械学習,自動運転に関する研究を進められた点が挙げられる.自動運転については,先行研究のアンケート結果を基に,各国の望ましい政策と我々の理論モデルが示唆する結果との対応を議論し,論文を仕上げることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度の目標として,過去2年間の研究を統合する形で,それを国内外に発信すること,特に国際学術雑誌への掲載を目指す.現時点で4本投稿しており,そのうち1本で改訂要求を受けているため,これらの研究に注力して改訂を進め,採択されることを目指す. また,上記以外として,現在,動学的な環境下での研究開発とリポジショニング戦略に関する研究を進めている.リポジショニング戦略は,企業が過去蓄積してきた技術を活かしてどのように新製品を開発するか,という点で,近年注目されている.合併,イノベーション,政策に関する研究を進めることで,その手法を,産業組織論のその他の周辺分野にも応用可能である点が分かってきた.そのため,上記の論文改訂に加えて,類似手法を応用できる分野についても,今年度は研究を進める予定である.
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Causes of Carryover |
2020年3月に出張を予定していたが,コロナウィルスの影響でキャンセルしたため,次年度使用額が生じた.現在,想定よりも多くの論文を執筆しているため,次年度に,英文校正費として使用する予定である.
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