2020 Fiscal Year Research-status Report
The Research on the Act on Assurance of Sound Financial Status of Local Governments and Local Public Debt in Japan
Project/Area Number |
18K01646
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
鷲見 英司 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (60337219)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 地方財政健全化法 / 将来負担比率 / 財政調整基金 / 費用効率性 / 地方公会計財務分析指標 / 有形固定減価償却率 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は,本研究と関連する科学研究費補助金のこれまでの研究成果を,費用効率性と地方財政の効率性に関する国内外の研究論文サーベイ等を加えて,博士論文(「地方財政の効率性に関する実証分析」)にまとめた.さらに,研究書として『地方財政効率化の政治経済分析』(勁草書房)を刊行した.これらの研究では,地方財政データ分析を通じて,近年の地方財政の健全化が,国が将来の普通交付税を通じて,地方債務を負担することが地方交付税制度によって担保されていること(つまり,地方財政運営に係る費用を国が負担し,将来に負担を先送りすることで成り立っていること)を指摘するとともに,包括的に行った確率フロンティア費用関数の推定結果から,都市では経常経費の10.1%から15.6%(平均値は12.9%)が浪費されており,町村では経常経費の29.8%が浪費されていたこと(つまり,地方行政サービス水準を維持したまま,都市は13%程度,町村は30%程度の経常経費の削減が平均的に可能であること)を明らかにした. さらに,全国市町村財政担当課へのアンケート調査を実施した.本調査は,近年積み立て過ぎが指摘されてきた財政調整基金残高等の基金残高の適正水準を分析するためのデータ構築を目的としていた.しかし,2020年からの新型コロナウイルス感染症拡大によって生じた財政需要の増大に対応するために,自治体が財政運営計画の大幅な修正を余儀なくされた可能性があるため,調査項目を精査し,新型コロナウイルス後の財政状況を踏まえた財政調整基金残高残高の適正水準や今後必要とされる行財政改革についても調査対象とした.本アンケート調査は,(1,718市町村のうち福島県内の9自治体を除く)1,709市町村に郵送し,978市町村から回答を得た(回収率は57.2%).本調査の結果は,2021年度において研究報告としてまとめるとともに,基金残高の適正水準を推定する実証分析に活用する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度は,資産サイドの長期間の財政データベースを構築し,平成大合併後の20年間の都道府県と市区町村別に基金残高の動向と積み立て・取崩しの実態を定量分析を通じて明らかにした. 2019年度は,「統一的な基準による財務書類」から得られる地方公会計財務分析指標のデータベースを構築し,各指標の分布の実態,健全化判断比率との関係を明らかにした. 2020年度は,積立金残高の適正水準を明らかにするための先行研究のサーベイ,全国市町村を対象としたアンケート調査,統計解析の予備分析を実施した. 新型コロナウイルス感染症拡大による自治体財政への影響を見極めるために,アンケート調査の実施が遅れたこと以外は,研究は現在のところおおむね順調に進展しており,2021年度は 4年間の研究の最終年に当たる重要な1年となるため,これまで以上に進捗管理に努めることとする.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の着実な推進と完成のため,2021年度は,以下の研究を実行する. まず,財政調整基金の適正水準に関するアンケート調査をとりまとめる.つぎに,アンケート調査結果から得られた財政情報を用いて,新型コロナウイルス感染症拡大の前後で財政調整基金残高の適正水準がどのように変化したのかを定量的に明らかにする.さらに,「統一的な基準による財務書類」から有形固定資産の老朽化度等に関するデータを構築するとともに,研究の完成に向け,地方財政健全化法に基づく「将来負担比率」では補足できない地方自治体の真の将来負担と効率化行動との関係を定量的に明らかにする.
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症拡大による自治体財政への影響を見極めるために,予定していたアンケート調査の実施が遅れたため,年度内に調査結果のまとめと定量分析に至らなかった.最終年度は定量分析に必要な研究資料等を整えて,本研究の成果をとりまとめる.
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Research Products
(2 results)