2019 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18K01653
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
小林 美樹 佐賀大学, 経済学部, 准教授 (70722388)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 所得格差 / 貧困 / 主観的厚生 |
Outline of Annual Research Achievements |
「日本の所得格差と貧困の現状と人々の生活満足度」の研究を行った。本研究では、日本における所得格差と貧困の現状をOECD諸国との比較、日本における推移および個票データから明らかにした。さらに、個票データを用いて、生活満足度についての分析を行った。 はじめに、2015年におけるOECD諸国の所得格差の状況をジニ係数で見ると、OECD平均は0.319であったが、日本は、0.330であった。同様に、2015年におけるOECD諸国の相対的貧困率を見ると、OECD平均は11.6%であったが、日本は、16.1%であり、相対的貧困率の高いほうから7番目であった。すなわち、日本は他のOECD諸国より格差が拡大しており、貧困も悪化していることが明らかになった。 また、具体的に個票データを用いて、どのような属性の人々が所得格差や貧困から影響を受けているのかを明らかにした。分析に用いたデータは、「くらしと仕事に関する調査」である。サンプルを男女別、学歴別、就業形態別に分類した。ジニ係数と貧困率を検証した。サンプル全体でのジニ係数は0.30であった。男女別では男性0.29に対し、女性0.30と高い。学歴別では、中卒0.39、高卒0.27、短大・高専卒、及び大学・大学院卒が0.29となっており、中卒が際立って高い。就業形態別でみると、正規雇用者0.26、非正規雇用者0.31、自営業者0.36、無職0.32となっており、自営業者のジニ係数が最も高い。この分析からは、女性、中卒者、自営業者において格差が大きいことがわかった。貧困率については、格差と同様に、女性、中卒者、自営業者において貧困率が高いことが示された。個票分析からは、所得格差および貧困の影響を最も強く受けているのは、女性、中卒者、自営業者であることが明らかになった。今後は、これらの人々の厚生が上昇するような所得再分配政策が望まれることを示した。
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