2018 Fiscal Year Research-status Report
Women's Employment and Earnings Mobility among Married Couples in Japan
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18K01654
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
森田 陽子 名古屋市立大学, 大学院経済学研究科, 教授 (00326159)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 女性就業 / 育児休業 / 就業継続 / 夫妻所得 / Assortative Mating / ワーク・ライフ・バランス / 分位点回帰モデル / 所得格差 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,妻の就業選択が夫妻所得の所得階層移動に与える影響を検証する。近年、日本では共働き世帯が増加し、夫妻所得における妻の就業の重要性が高まっている。妻の就業は夫妻所得の分布に影響を与えると考えられる。本研究では、計量経済学の手法を用い、妻の就業選択が夫妻所得の階層移動に与える影響を検証する。妻の就業選択の影響を夫の所得階層別で捉えることで、どの所得階層にいる妻のどのような就業選択が、夫妻の所得階層の移動に影響を与えるのか、その結果、今後の夫妻所得の格差にどのような影響を与えるのかを明らかにする。 これにより、夫妻所得の格差を縮小するためにはどの所得階層の世帯への就業支援に力を入れればよいのか、更にはワーク・ライフ・バランス施策のような継続就業支援が所得格差に与える影響について政策的な含意を得ることを目的とする。 具体的には以下の2つの実証分析をおこなう。①妻の就業の夫妻所得階層における上方移動・下方移動への影響、②妻の就業選択が夫妻所得の水準に与える影響、である。 これらを夫の所得分位別に推定することにより、妻の就業選択や育児休業利用経験が上方移動や下方移動に影響があるのか、影響がある場合,夫の所得水準によって影響の大きさに違いがあるのかを明らかにする。 分析には公益財団法人家計経済研究所「消費生活に関するパネル調査 」(1997~直近)を用いた。2018年度は主に①の分析を行い、論文としてまとめ、研究会及び学会において報告をおこなった。②の分析については実証分析を遂行中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度は、妻の就業選択が夫妻所得の階層移動に与える影響について実証分析をおこなった。実証分析には公益財団法人家計経済研究所「消費生活に関するパネル調査」の利用申請をおこない、データ取得をした。分析の結果以下のことが明らかとなった。まず、妻が出産後も継続的に就業することは、夫高所得層において所得階層を上方に移動させる効果がある。次に、育児休業の利用は夫高所得層で上方移動を促進する効果が大きい。これらの結果から以下の政策的インプリケーションを得ることができた。夫高所得層の妻に対して,就業支援をすることは夫妻所得の格差を拡大するため,ワーク・ライフ・バランス施策の制度の中立性を高めることが所得格差の観点から重要である。加えて,貧困対策の観点から夫低所得層の妻に対する就業支援を重点的におこなうことが期待される。 上記の結果は論文としてまとめるとともに、研究会での報告をおこなった。国内においては名古屋市立大学火曜研究会において研究報告をおこなった。加えて、2018 APEF Conference in SingaporeとThe 35th International Association for Research in Income and Wealth General Conference in Copenhagenにおいて研究報告をおこなった。 次に、妻の就業選択が夫妻所得の水準に与える影響についての実証分析を進めている。これについても第一段階の分析を終了しており、現在、分析手法を更に精査している段階である。この分析に関する研究成果も2019年度中に論文としてまとめ、学会等において報告をする予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は主に妻の就業選択が夫妻所得の水準に与える影響についての実証分析を精緻化し論文としてまとめる作業を進める予定である。ここでは、妻の育児休業取得や就業継続が夫妻所得に与える影響、所得階層別に検証をおこない、妻の育児休業取得が夫妻所得を上昇させる効果があるのか、また、所得階層ごとにその効果が異なるのかどうかを明らかにする。これにより、ワーク・ライフ・バランス施策の普及による既婚女性の継続的な就業が夫妻所得の分布に与える影響を考察する。 分析には、公益財団法人家計経済研究所の「消費生活に関するパネル調査」(2013~直近)年調査を用いる。分位点回帰モデルにより、所得階層毎に妻の育児休業取得、就業継続が夫妻所得の上昇に与える影響を検証する。ただし、妻の育児休業取得や就業継続と夫妻所得の水準との間には内生性があることが予想されるため操作変数法推定の枠組みを用いた推定方法を検討している。 上記の分析を2019年度中におこない、分析結果を論文としてまとめることを目指す。
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Causes of Carryover |
旅費に係る費用が当初の予定よりも少なかったためである。2019年度以降の学会報告や研究打ち合わせのための旅費に充てる予定である。
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