2018 Fiscal Year Research-status Report
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18K01662
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Research Institution | Musashi University |
Principal Investigator |
広田 啓朗 武蔵大学, 経済学部, 教授 (10553141)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 財政ルール / 地方財政健全化法 / 財政調整 / SUR with DID / 市町村合併 / コモン・プール問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
財政コモン・プール問題によって拡大する財政赤字に対処するための方策として、新たなる財政ルールを課すことが考えられる。そこで、本研究では、2007年度に施行された地方財政健全化法に焦点を当て、同法が施行以降に、都道府県がどのような財政行動をとったのかをFixed Effect SUR modelを用いて検証した。健全化法以降、地方団体のフローの財政指標である実質赤字比率や連結実質赤字比率は改善傾向にある一方で、ストックの財政指標である将来負担比率は悪化傾向にあることが明らかになった。これは、単年度主義が原則である地方団体の予算制度のもとで、健全化法によって新たに導入された財政指標の財政健全化基準及び財政再生基準を超えて中央政府の監視下に置かれることを避けたいという地方団体の財政調整行動を示すものである。研究結果は、2018年12月に「地方財政健全化指標における相互依存関係」という論文を査読付き学術雑誌である内閣府経済社会総合研究所『経済分析』に公表している。 また、上記の論文を拡張したものとして、"The effects of the new fiscal rule and creative accounting"という論文を執筆した。これは、市町村が新しい財政ルールの施行後に、どのような財政行動をとったのかをSUR with DIDを使って検証したものである。分析結果より、平均的に、市町村は財政ルールの施行後に監視対象となる財政4指標は改善しているものの、監視対象となっていない公営企業への繰出金等の指標は増加していることが明らかになった。すなわち、監視対象となる指標を改善させるために、監視対象とならない指標の悪化を許容する状態にあったと考えられる。本論文は、ワーキングペーパーとして公表しており、適宜修正を重ねながら海外査読付き学術誌に投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、おおむね順調に進展している。平成30年度はおもに調査と研究発表を多く実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、平成30年度に実施した分析をもとに論文を執筆し、国際・国内学会で研究発表を複数回実施することを予定している。また、市町村合併時における共有財源問題の研究では、市町村が合併前に地方債の発行を増額したことは明らかになっているが、どのような公共サービスを増加したのかは明らかになっていない。従って、各公共サービスの費用項目に着目した追加的な分析を継続している。また、海外の研究者と意見交換をするため、オーストラリアにて開催予定のワークショップに参加することを予定している。
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Causes of Carryover |
国際学会等への海外出張の際、近年日本と諸外国との物価差が大きくなる傾向にあり、航空費や宿泊費が想定以上に必要となるケースが存在する。そのため、当初予定していた備品購入を次年度以降に遅らせることにより使用計画を変更することにした。
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Research Products
(7 results)