2018 Fiscal Year Research-status Report
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18K01673
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
筒井 義郎 甲南大学, 経済学部, 特任教授 (50163845)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山根 承子 近畿大学, 経済学部, 准教授 (40633798)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 不平等回避仮説 / happiness function |
Outline of Annual Research Achievements |
当年度に行ったことは次の2点である。第1に、交付申請書の研究実施計画の1.にあげた、「不平等回避仮説」の実証を進めた。その結果、アメリカでは「不平等回避仮説」が支持される傾向が見られたが、日本では強く棄却された。すなわち、日本では周りの人より豊かであると思っている人はその分幸福である。つまり、日本人は自分が他人より豊かであることを良しとし、平等を好まないのに対し、アメリカ人は他人より豊かであることを嫌う傾向がみられる。さらに、日米のこの違いの原因を分析し、アメリカ人でも、信仰心の強い人や利他性の強い人は不平等回避を強く示すが、そうでない人は不平等を嫌うわけでないことが分かった。一方、日本人は信仰や利他性は関係がないが、日本人のうちでも平等を嫌うのは集団主義的な人であり、個人主義が強い人は平等を嫌うわけではなく、平均的なアメリカ人と近い選好を示すことが分かった。 第2に、交付申請書の研究実施計画の4.にあげた、「平等化は労働のインセンティブを損なうか」どうかの研究について、労働供給関数の推定を通じて接近を試みることとし、厚生労働省の「国民生活基礎調査」のデータの利用申請をし、利用許可を得た。そのデータの読み込みをした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題は4つの研究からなるが、そのうちの第1課題について、ほぼ目指していた成果が得られる見通しができた。また、第4課題については成果を得るための具体的な方法について進捗があり、それに関するデータが入手できた。
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Strategy for Future Research Activity |
第1課題について、当初目的としていた日本とアメリカに関する分析はほぼ終えたので、さらに、中国とインドについて期待される成果が得られるかどうかを分析してみる。第4課題についてはできるだけ早急に、標準的な労働供給関数の推定を行う。第1課題についての研究が終われば、第2課題の分析に進む。
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Causes of Carryover |
初年度にアンケート調査を行う費用を計上していたが、アンケートの内容や実施について完了することができなかった。当該年度は、第1の課題である不平等回避仮説の実証研究の完成を目指したが、その結果、不平等回避の態度は日米で大きく異なることが判明し、その原因が、両国の、宗教、利他性、個人主義・集団主義の違いによるという結果にたどり着いた。この成果を踏まえると、このような文化的な違いで不平等回避態度が異なるという仮説が、より普遍的に成立するかどうかについて、追加的な国際比較を行うことが重要であるとの認識に至った。このため、アンケート調査に関しては、上記の国際比較を行うのに適切な国(文化的特徴)の選定を含めて再構築し、次年度以降に実施することが適切あると判断した。
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Research Products
(2 results)