2019 Fiscal Year Research-status Report
日本の労働市場におけるジョブマッチング理論の実証研究
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18K01675
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
玉田 桂子 福岡大学, 経済学部, 教授 (80389337)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ジョブマッチング / ミスマッチ / スキル / 雇用保護規制 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、労働者と企業のマッチングの質(match quality)が生産性に与える影響を実証的に明らかにする。具体的には、マッチングの質を時間に関して可変な部分と不変の部分に分け、その2つのマッチングの質が生産性に与える影響を詳細に分析する。混合マルチレベルモデルを用いることにより、時間に関して可変なマッチングの質と不変なマッチングの質を分けて推定することができる。 2018年度には時間に関して不変なマッチングの質が生産性の代理変数となる賃金に与える影響を分析したが、2019年はその分析をさらに進めて労働者と企業の時間に関して可変なマッチングの質が生産性に与える影響および時間に関して不変なマッチングの質の分散を明らかにした。分析の結果から、労働者と企業の時間に関して変化するマッチングの質は生産性に影響を与えないこと、時間に関して変化しないマッチングの質の分散が小さいことが示された。ここで得られた結果をWestern Economic Association International 94th Annual Conference、Asia-Pacific Economic Association 15th Annual Conference で報告した。 さらに、マッチングの質は労働者の移動により改善されるが、労働市場の流動性が低いと労働移動が怒らずマッチングの質が生産性に与える影響の大きさが異なる可能性がある。この点を明らかにするために、労働移動を抑制する可能性がある雇用保護規制などの政策の指標がマッチングの質が生産性に与える影響の大きさに影響を与えるのかについても分析を行っている。雇用者を保護する規制がマッチングの質の低下を通じて生産性を低下させているならば、政策担当者は雇用保護規制を強化する際に生産性が低下する可能性も考慮する必要があることになる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた時間に関して可変なマッチングの質と不変なマッチングの質が生産性に与える影響については分析が終了した。先行研究ではマッチングの質が生産性や賃金に影響を与えるとされてきたが、本研究では時間に関して不変か可変かに関わらずマッチングの質は生産性に影響を与えないか、与えたとしても非常に小さいことが明らかになった。この結果を受けて、先行研究とは異なりなぜ本研究ではマッチングの質が生産性に影響をほとんど与えないのかを明らかにすることが必要になった。理論的には、労働者と企業のミスマッチは労働移動で解消されるとされているため、労働移動を抑制しやすい雇用保護規制に注目することにした。雇用保護規制が強いと企業側はミスマッチを解消するために労働者を解雇することが出来ず、労働者も転職が難しくなる。この点に注目し、雇用保護規制の強さによってマッチングの質が生産性に与える影響が異なるか否かについても分析を開始した。この分析を追加したことにより、本研究は当初予定していた研究内容をより発展させたものになっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、雇用保護規制はマッチングの質が生産性に与える影響の大きさに関係しているのかについてより詳細に分析し、論文にまとめる。論文にまとめたものをセミナーや研究会で報告する予定である。 COVID-19の影響により、報告が決定していたWestern Economic Association International 95th Annual Conferenceに参加することが出来なくなった。その代わりに2021年3月にAix-Marseille Universityで開催されるGilles Dufrenot教授が主催する研究会で本研究の成果を報告する予定である。また、その他のセミナーや研究会などで報告することが可能であれば報告する機会を増やす予定である。当面の間は対面式の研究会等への参加は難しいと思われるが、オンラインでの研究会等も開催されるため、何らかの形で報告は可能であると思われる。 研究会等で得られたフィードバックを論文に反映させて改訂し、査読付き雑誌に投稿する準備を行う予定である。
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Causes of Carryover |
年度末に予定していた研究会がCOVID-19の影響によりキャンセルされたため、次年度使用額が発生した。 次年度使用額は2020年度支給額と合わせてフランスのAix-Marseille Universityで行われる研究会への旅費、または論文の英文校閲費に使用する予定である。
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Research Products
(2 results)