2018 Fiscal Year Research-status Report
Term Structure of Dividends: Theory and Empirics
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18K01678
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
高見澤 秀幸 一橋大学, 大学院経営管理研究科, 准教授 (60361854)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 期間構造 / 配当 / リスク / リスクプレミアム / 選好 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題の目的は、株式配当に関する期間構造の理論モデルを構築し、実証することである。具体的には、配当リスクプレミアムの期間構造に影響を及ぼす要因を特定し、その要因が投資家のリスク選好とどのように関連しているかを明らかにする。 まず、配当インデックスや配当インデックス先物のデータを、日米欧の3つの国・地域について集め、その統計的な性質を把握した。次に理論面では、投資家のリスク選好が資産価格に反映される経路を確立するために、再帰的効用関数における選好パラメータがマクロ変数や市場変数に依存する拡張を行った。その上で、均衡における資産価格を一般的に導いた。さらに、配当の変動過程のモデル化にもジャンプを導入するなどの工夫を凝らし、配当期間構造に関する次の3つの観測事象を説明することに成功した:(1)右下がりのリスクプレミアム・カーブ、(2)右下がりのボラティリティ・カーブ、(3)右下がりのシャープ・レシオ・カーブ。これらを同時に説明できる均衡資産価格モデルは、現状ではほとんど存在しない。さらに、行動経済学や行動ファイナンスに関する文献のサーベイを通じて、選好が変化するエビデンスを集めた。これによって、本研究における効用関数の拡張がこれらのエビデンスに矛盾しないことを確かめた。 一連の研究成果は、国際会議(アジアファイナンス学会)やセミナー(東北大学、中央大学)で報告した。さらに、「An Equilibrium Model of Term Structures of Bonds and Equities」という題目の下、一橋大学ファイナンスセンターのワーキングペーパー(WP)として公表した。当WPは、現在海外学術誌に投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度の当初計画は、(1)日米欧の配当先物データを用いて簡単な実証分析を行い、理論モデルに採用すべき性質を明らかにすること、(2)配当期間構造の理論モデルを構築すること、(3)国際学会を含めて数件の研究報告を行うこと、であった。 (1)簡単な実証分析については、データを集め、記述統計を行うことでほぼ達成できた。(2)の理論モデルの構築については、実証分析に応用するという観点からは改善の余地を残すものの、成果をWPにまとめたことで達成できたと言える。(3)の研究報告についても、アジアファイナンス学会で採択され実際に発表を行うなど達成できた。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度に構築した理論モデルを、実データを用いて推定する。そのためには、まずリスク選好に影響を及ぼす要因を特定し、その代理変数をモデルに投入してパラメータを推定する。次に、その要因を潜在変数として扱い、要因の抽出とパラメータの推定を同時に行う。後者の推定は計算負荷が高いため、理論モデルを実装しやすいように予め工夫しておく必要がある。その工夫は、現時点での大きな課題である。 新たなアプローチから配当期間構造の理論モデルを構築する。2018年度のモデルは効用関数を拡張したが、新モデルでは消費や配当の変動過程を拡張する。そのためには、それらの挙動をよく記述できるモデルを、消費や配当のマクロ時系列データから推定しておく必要がある。配当期間構造のデータを説明するためには、効用関数とキャッシュフローの変動過程のどちらを拡張した方がより効果的であるか、明らかにしたい。 2019年度も国際学会を含めて数件の研究報告を行う。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた最大の理由は、配当インデックスと配当インデックス先物のデータを想定以上に安く入手できたことである。 翌年度分の使用計画としては、実証分析を本格的に行うのに合わせて、高性能なデスクトップ・パソコンとそれにインストールする統計ソフト(GAUSS System)を購入する。さらに、ファイナンスの海外学術誌の多くは投稿費が発生するため、その費用に充てる。
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