2019 Fiscal Year Research-status Report
The demand and supply factors in the stability and dynamics of leverage
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18K01680
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
伊藤 彰敏 一橋大学, 大学院経営管理研究科, 教授 (80307371)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | レバレッジ / IPO / 資金配分 / 財務的柔軟性 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究実施計画の三つの柱のうち(1)レバレッジの安定性・変動性の計測については、レバレッジの変動と調達先の資金配分がどのように関連しているかについて先行研究を整理し、検証仮説を構築した。また日本の上場企業における調達先に関する資金配分の基礎的データを整備し、個別企業においてレバレッジ水準の変化に伴い調達先の構成がどのように変化したかについて予備的な分析を行った。第二の柱である(2)レバレッジ変動性と需要要因・供給要因との関連性の分析については、金融機関の貸出行動に関する文献を整理し、特にIPO前後でのレバレッジの変化や銀行借り入れなどの負債構成の変化を説明する仮説を構築した。その上で、過去15年間の日本におけるIPOに関するデータから分析を実施した。その結果、IPOを実施する企業は、IPOというイベントを経て銀行借入と社債の負債構成、銀行借入における調達構成を大きく変化させること、しかし基本的にIPO前のメインバンクは、借入比率においてその重要性が大きく低下するとはいえ、企業をIPO後もサポートし続けるということが判明した。最後に、実施計画(3)レバレッジと大型投資行動など企業行動との関係については、レバレッジの多寡が、配当と投資行動とのトレードオフに影響するとの実証結果を得た。言い換えれば、レバレッジの経営者に対する規律付け効果が、配当と投資行動との相関を正から負に変えるポイントが存在することを示唆する実証結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画の三つの柱のうち(1)レバレッジの安定性・変動性の計測については、予定通り2019年度の研究で、資金配分に関する分析を進めることができた。2020年度は、レバレッジの調整速度の分析を加える予定である。実施計画(2)レバレッジ変動性と需要要因・供給要因との関連性の分析については、2019年度は、レバレッジの大きな変動が予想されるIPO企業のサンプルに関して分析を実施し、銀行側の誘因を考慮した分析結果において興味深い知見を得ることができた。また実施計画(3)レバレッジと大型投資などの企業行動との関係については、当初の予定に沿って2019年度に、レバレッジの変化がもたらす投資行動、研究開発費、還元政策への影響を分析することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、実施計画(1)レバレッジの安定性・変動性の計測については、レバレッジの変動と調達先の資金配分との関連性の分析を完成させる。実施計画(2)レバレッジ変動性と需要要因・供給要因との関連性の分析については、IPOサンプルで得られた知見を活用し、上場企業全般へと分析を拡張する予定である。最後に実施計画(3)レバレッジと大型投資などの企業行動との関係については、レバレッジがM&Aの意思決定に与える影響の分析など企業の具体的な投資行動への影響をより綿密に分析していく予定である。
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Causes of Carryover |
未上場企業財務データを購入する予定でいたが、分析結果を見た上で購入範囲と費用を決めたいので、2020年度に繰り越した。帝国バンクデータの購入を検討している。米国でのセミナー発表を計画していたが、新型コロナウイルス問題で取りやめとなった。
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