2021 Fiscal Year Annual Research Report
Sales volume and efficiency of the racetrack betting market
Project/Area Number |
18K01686
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
芦谷 政浩 神戸大学, 経済学研究科, 教授 (10304057)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 公営賭博市場 |
Outline of Annual Research Achievements |
「私的情報を持つ経済主体」と「持たない経済主体」がいる市場では、私的情報を持たない経済主体の取引量が増えると他の経済主体の取引量も増加する一方で、価格に含まれる情報量は減少することが知られている(Vives, 2008, p.176)。つまり、「市場全体の取引量」を「市場の厚み」と定義するなら、市場の厚みが増したときに市場の効率性が低下する場合がある。言い換えると、「市場の厚みが増すと市場の効率性は高まる」という一般論は常に正しいわけではない。 そこで本研究課題では、公営賭博市場における勝者投票券のオッズデータを用いて、両者の関係を実証的に分析した。勝者投票券(馬券や車券など)は、ある特定の事象が生じたとき、そしてそのときのみ払い戻しが行われるので、払戻条件が厳密に定義された条件付債券の一種であり、通常の債券などと同様に価格の歪みなどを分析することができる。具体的には、日本の地方公営競馬の3270レースを分析して、異なる種類の勝者投票券の間でオッズに整合性があるかを調べた。その結果、勝者投票券の売得金額が大きいレースほど、オッズの整合性が高い(=市場の効率性が高い)ことが明らかになった。また、売得金額が同じなら、出走頭数が少ない(=オッズの整合性を容易に検証できる)レースほど市場の効率性が高かった。さらに、売得金額とレースの出走頭数が同じなら、出走時刻が早い(=賭博常習者の比率が高い)レースほど市場の効率性が高いことが明らかになった。 これらの分析結果は、論文「Sales volume, noise traders, and efficiency of the Japanese racetrack betting market」にまとめて、海外の査読付き学術雑誌に投稿中である。
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