2019 Fiscal Year Research-status Report
Constructing a regime-switching macroeconomic model taking into account of financial crisis regime
Project/Area Number |
18K01687
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
西山 慎一 神戸大学, 経済学研究科, 教授 (70614006)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 不良債権 / バランスシート / 貸し出し利鞘 / レジームスイッチ / ニューケインジアン |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、3つのプロジェクトについて研究を推進した。まず1つ目であるが、海外の共同研究者であるShahidul Islam氏(ダッカ大学)を招聘し、金融機関の不良債権問題に着目し、どのような経済要因(金融機関の要因、業界全体の要因、マクロ経済的要因)が金融機関の不良債権比率を説明する上で重要かを南アジア地域の金融機関の財務情報をもとに実証分析を行った。なお、この論文は査読付き学術誌に公刊された。 次に2つ目のプロジェクトであるが、共同研究者である相澤朋子氏(日本大学)とともに、国内金融機関の貸し出し利鞘がどのような要因によって決定されるのかについて実証分析を行った。理論上、企業側と金融機関側のバランスシート状況(特に負債比率)のどちらも貸し出し利鞘の決定要因として重要であるが、我々の実証分析の結果では、企業側のバランスシート状況が新規融資の利鞘を説明する上でより重要であるとの実証結果を得た。この実証分析の結果については、目下論文にまとめており、近い内に学会発表を経た上で査読付き学術誌に投稿する予定である。 最後に3つ目のプロジェクトであるが、共同研究者である加藤涼氏(東京大学)とともに、インフレターゲットがレジームスイッチすることを許容した一般化されたニューケインジアン型動学的一般均衡モデルを構築した。従来、標準的なニューケインジアンモデルはインフレターゲットが固定的という仮定のもとにモデルが推計されていたが、これは明らかに不適切な仮定であり、景気やインフレの要因分析をする際にバイアスが混入することが否定できない。そこで我々は、インフレターゲットがレジームスイッチすることを許容するようモデルを一般化し、目下、実証分析に取り組んでいる。実証分析についてはまだ途上であるが、2020年度中には一定の分析結果を得て、大学等のセミナーで報告することを予定している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は、1つ目のプロジェクトの論文が学術誌に公刊された。この他、研究課題と間接的に関係する論文が2本、学術誌に公刊された。2つ目のプロジェクトについては、実証分析が完了しており、論文の執筆段階にある。3つ目のプロジェクトについては、実証分析で利用するモデルのプロトタイプは構築されており、これをさらに改良する必要はあるが、2020年度中にモデルを完成させ、実証分析に移ることが見込まれている。上記の通り、全てのプロジェクトにおいて順調に研究は進捗しており、2020年度もこのペースで研究を推進していく予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
2019年度の研究進捗を受け、1つ目のプロジェクトでは新規の研究論文に取り組むことを予定している。具体的には、日本、中国、インドのアジアの3大経済圏における不良債権問題にフォーカスを当て、上記3国で金融機関の抱える不良債権比率の決定要因がどのように違ているのか、あるいは似ているのかについて実証的に分析を行う予定である。2つ目のプロジェクトについては、論文を書き上げ、早期に学会にて発表を行う予定である。3つ目のプロジェクトについては、実証分析に用いるモデルを完成させ、早期に実証分析に移る予定である。
|
Causes of Carryover |
2019年度は国際学会への参加を諸事情により見送ったため、科研費の旅費を節減することができた。この結果、次年度使用額が生じたが、2020年度は繰越額を旅費や研究者招聘に充てる予定であるが、新型コロナウィルスの影響もあり国際学会への参加や海外研究者の招聘が可能かどうかは流動的である。
|
Research Products
(5 results)