2019 Fiscal Year Research-status Report
金融政策のリスク資産に対する非対称的な経済波及効果に関する実証研究
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18K01688
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
小野 貞幸 広島大学, 社会科学研究科, 准教授 (80602002)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 量的緩和政策 / リスクプレミアム / 経済波及効果 / 非対称性 |
Outline of Annual Research Achievements |
非伝統的な金融政策を測定する中央銀行の全資産額が週次データとして存在し、加えて観測値が月次に比べて多くなることから週次のデータを用いて実証を行ったが、月次のデータも使い実証結果を得た。月次データを使う良い点として、政策金利による金融政策の株式に対する影響を調べた主要な先行研究と中央銀行の全資産以外は同じ変数を用いることができ、先行研究の結果に対して直接的な比較を行うことが可能になる。
新たに2008年11月から2019年12月まで130の観測値を使い米国株価指標と非伝統的な金融政策に関する実証研究を行った。主な結果として線形単回帰モデルから、SP500の超過リターンと時価総額の大きさに依存した3つの株価指数ポートフォリオの超過リターンが1か月前のFRB全資産額の増加率に正に有意に影響されることが示された。特に影響は小型株で最も大きくなることが観測された。またセクター分類による超過リターンに対して同様の実証を行い、11のセクターの内8つのセクターで正に有意になった。量的緩和策の影響の度合いがブル・ベア市場で異なるという意味で非対称的な特徴を示すか検証するため、マルコフスイッチングモデルを応用した。全体像として、ベア市場時の量的緩和の正の効果がブル市場時より強いことが明らかになった。
非伝統的な金融政策の株価に対する効果をVARモデルの評価から3つの経済波及効果に分類し数値を求めた。その結果、セクターやサイズを含め多くの場合で、リスクプレミアム効果と利益や配当が関係するキャッシュフロー効果が実質短期金利効果より大きく寄与することが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
以下3つの点でより多くの時間が必要となり、研究が予定通りに進まなかった。
第1に計算負荷が比較的高い、マルコフスイッチングVARの評価で信頼性のある結果を得るために予定より多くの時間が必要となった。第2に量的緩和策の測定値として中央銀行の全資産額の成長率を外生変数として用いることの根拠を示すため、加えて他の有効な量的緩和策の測定値を見つけるため先行研究の調査・分析などに時間がかかった。最後に当該年度途中まで週次データで実証を行ったが、先行研究との効果的な比較を行うことが重要と考え、先行研究と同じように月次のデータによる考察も行った。
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Strategy for Future Research Activity |
実証研究の大部分は終了したが、経済波及効果に関する非対称性を調べるためマルコフスイッチングVARモデルを評価する。SP500の超過リターンに対して初期的な結果を得ており、サイズとセクターのポートフォリオに関して同様の評価を行い、非対称的な経済波及効果が観測されるか確かめる。
実証結果の頑健性を確認するため、通常金融政策は経済成長、物価、金融市場の安定などを考慮して実施されるため、これらに関連した変数をFRBの全資産額も含めた内生変数としたVARモデルから量的緩和策のショックを計算し量的緩和策の変数として実証を再度行う。また、金利政策の影響を分析するためフェデラルファンド金利を政策変数として用い、同じサンプル期間に同様の実証モデルを評価し株式指数の超過リターンに対する影響を調べる。さらに量的緩和策と投資家機運との関係を検証する。投資家機運の変数として先行研究に従いInvestors Intelligence Sentiment Indexのブル・ベア比率を使い同様の実証を遂行する。次年度中旬までに米国における量的緩和策と株式市場に関する論文を作成し、内外の学会で発表を行う。
次年度後半中に米国における量的緩和策と信用市場との関係を調べる。信用市場の状況を測定する変数として長・短期国債利回り差、社債利回りと短期国債利回り差、セクターごとのCDS保証料を用いる。また日本銀行による量的緩和策と日本株式市場の関連について米国と同様の実証を行う予定である。
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Causes of Carryover |
当該年度中に多くの実証結果が得られ進展はあったが論文を作成することができず、英文校正の費用や学会発表のための旅費が必要とならなかった。次年度は論文を完成させ、これらの費用を使用する予定。
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