2018 Fiscal Year Research-status Report
データマイニングの危険性を考慮した資産価格のファクター・プレミアムに関する研究
Project/Area Number |
18K01691
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
内山 朋規 首都大学東京, 経営学研究科, 教授 (50772125)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 資産価格 / ファクター / リスクプレミアム / オーバーフィッティング / 機械学習 / ビッグデータ / データマイニング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は資産価格のファクター・プレミアムの実証において、オーバーフィッティングを考慮した予測可能性に関する分析を行うものである。まず研究の第一段として、時系列における市場リターンを対象に、機械学習とビッグデータを用いた、アルゴリズム選択と変数選択のマイニングによる予測可能性の分析を実施した。 この結果、クロスセクションに比べて予測対象のサンプル数が少ない時系列において、本質的にオーバーフィッティングが特に深刻であることを定量的に明らかにした。線形の予測モデルよりも機械学習による非線形モデルを用いた場合の方が影響は深刻である。また、多重検定であることを考慮した場合に、有意水準をどの程度に設定すべきなのかに関する分析も行った。本研究の分析手法はシンプルで、モデル診断のための実装が容易という利点がある。 今年度は、Organizing Committeeの一人として国際ワークショップを開催し、国内外の研究者14名(国外5名,国内9名)のスピーカーを東京に招聘して、得られた結果をもとに発表し、意見交換を行った。 さらに、市場ファクターの時系列における予測可能性だけでなく、株式や債券、デリバティブの各市場におけるクロスセクションにおけるファクター・プレミアムの実証分析にも着手した。 資産価格のプレミアムは時間変動し、リターンが予測可能であることは現在のファイナンス理論における標準的な考え方である。しかし、統計的にこれを検出することは難しく、安易なデータマイニングはオーバーフィッティングという忌忌しき事態を招く。明らかに市場は簡素な線形回帰の世界よりも複雑である。機械学習やビッグデータは有効なツールになりうるため、本研究の成果はデータサイエンスの技術を取り入れ意思決定の改善に役立つには、オーバーフィッティングの問題を考慮する必要があることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、データを用いた機械学習による分析を行い、実証分析およびモデル化の基礎分析を予定通り実施した。また、市場ファクターを対象にした分析のほか、株式や債券、デリバティブ市場におけるクロスセクションのファクター効果を対象にした分析にも着手した。本研究課題は当初の計画通りに進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り、構築した基礎的なデータベースを拡張し、これを活用した実証分析を進める。市場ファクターの時系列における予測可能性だけでなく、株式や債券、デリバティブの各市場におけるクロスセクションにおけるファクター・プレミアムの実証分析も進める。
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Causes of Carryover |
今年度は研究の初年度で基本的な分析を行ったことから、既存の設備やデータを使用した。今後は分析の高度化のために適切な設備やデータを導入する計画である。
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