2020 Fiscal Year Research-status Report
データマイニングの危険性を考慮した資産価格のファクター・プレミアムに関する研究
Project/Area Number |
18K01691
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
内山 朋規 東京都立大学, 経営学研究科, 教授 (50772125)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 資産価格 / ファクター / リスクプレミアム / オーバーフィッティング / 機械学習 / ビッグデータ / データマイニング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は資産価格のファクター・プレミアムの実証において、オーバーフィッティングを考慮した、資産リターンの予測可能性に関する分析を行うものである。前年度までに得られた成果を拡張し、主に以下に関する研究を実施した。 第一に、標準的な理論に基づけば、あらゆる証券は複数のファクターを束ねたものであることが示唆されるが、理論からはファクターの組み合わせ方法は特定されていない。果たして、機械学習はファクターの組み合わせを学習できるのであろうか。分析の結果、ファクター間の非線形な相互作用を考慮したさまざまなアルゴリズムを用いても、リターンの予測精度は向上せず、逆に単純な線形合成よりも悪化することを得た。これは、市場価格はオーバーフィッティングに陥りやすく、背後にある経済学的理論が重要であることを示すものである。 第二に、株式市場のクロスセクションを最も特徴づけるバリューのファクター効果について、これがバリュー指標という特性そのものによるアルファなのか、あるいはファクターに対するベータからもたらされるものなのかを探究した。オーバーフィッティングの影響を回避しつつ、ニューラルネットワークに基づくファクターモデルを実証的に構築した結果、バリュー効果はベータであることを得た。この結果は、証券の期待リターンを推定する上で、ファクターを特定することに加えて、エクスポージャーの時間変動も考慮することが重要であることを示している。 第三に、グローバル債券市場を対象にした研究も実施した。キャリーのファクター効果は金利と為替を横断して観察されるが、為替リスクをヘッジした外債投資を行う場合には、金利と為替の間でキャリーに負の関係があるため、単独では機能しない。そこで、両者を統合した新たなファクターを定義した戦略を考察した結果、オーバーフィッティングを考慮しても、リターンの予測力が有意に向上することを得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症の影響に伴い、大学授業の体制整備や、分析データが格納されている施設への立ち入り制限、共著者との意見交換や共同作業に支障が生じたため、特に年度前半は研究の進捗が停滞した。 一方で、完了した実証分析について、2本の論文を公表した。また、進行中の4本の研究について、これまで得られた結果をもとにそれぞれ学会発表を行った。さらに、新たに1本の研究の分析に着手した。これまで得られた結果について、学会発表を行う段階にあり、これを通じて更なる分析の精緻化を進めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である次年度は、(1)査読付き雑誌に投稿済みの研究については採択を目指し、レフェリーの指摘に対応した追加分析を実施する。(2)基礎部分の分析が終了した研究については、学会での研究報告や当該分野の研究者との交流を通じて意見交換し、更なる精緻化と改善に努め、論文を完成させて投稿を目指す。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響に伴い、研究の進捗が停滞したことや、国内外の学会参加の旅費の支出などが想定を下回ったことによる。
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Research Products
(8 results)