2019 Fiscal Year Research-status Report
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18K01694
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Research Institution | Hokkai-Gakuen University |
Principal Investigator |
吉川 大介 北海学園大学, 経営学部, 准教授 (90735424)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 不確実性 / ペアーズ・トレーディング / 曖昧さ回避 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究成果は2点にまとめられる. 1点目はペアーズ・トレーディングにおける新しいペアー選択手法を開発したことである.従来のペアー選択手法はディスタンス法や共和分法に見られるように伝統的な統計学に基づく手法が中心である.これに対して近年技術の進展が著しい深層学習の手法を援用した技術を開発した.具体的にはペアーの候補となる株式銘柄群のネットワークを深層学習により構築し,ペアー間の価格変動がもっとも近いものを選択する仕組みを構築した.これにより従来より安定的なペアーの選択が可能になった.前年度までの研究によりペアーの選択後,いつポジションを組み,いつ利益を確定するかという手法は概ね完成させることができたので,本年度の研究成果によりペアーの選択からポジションをとるタイミングまで一貫した手法の構築に目途を立てることができた.またこの研究成果は論文にまとめ本年度の学会で報告を予定している. 2点目はファイナンス理論における三大アノマリーの一つであるディスポジション効果を説明する新しいモデルを構築したことである.ディスポジション効果については従来Barbaris and Xiong (2009)らによるプロスペクト理論を用いた説明が有名だが,Barbaris and Xiong (2009)のモデルをさらに拡張したモデルにより従来より説明力の高いモデル構築に成功した.具体的にはKlibanoff et al. (2005)らによる曖昧さ回避を説明するモデルを参照点に依存するモデルへと拡張してディスポジション効果を説明した.この研究成果は論文にまとめ現在投稿中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
深層学習を取り入れることでペアーズ・トレーディングの新しい技術を開発できたことは大きな成果である.また,ディスポジション効果を説明するモデル構築に関する研究は曖昧さ回避に関する新たな知見を与えるものである.これらの研究は安定的なペアーズ・トレーディング技法の開発につながる重要な進展であるといえる.以上より,研究はおおむね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度開発したペアーの選定方法をさらに洗練させ,ペアーの価値を数学的に扱いやすい形に変換する手法を検討する.これによりいつポジションを組み,いつポジションを流動化させるかという最適停止問題にペアー選択の技術をスムーズに接続できる. また,ディスポジション効果を説明するモデルについてもより扱いやすい形式への拡張を検討する.
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Causes of Carryover |
本年度は研究打ち合わせで東京,上海への旅費支出が主だったものの,いずれも短期の滞在にとどまったこと,また次年度から所属研究機関が変わることにともない支出が自然抑制されたことなどのため次年度使用額が生じた.
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