2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K01694
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
吉川 大介 関西大学, 政策創造学部, 准教授 (90735424)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 不確実性 / ペアーズ・トレーディング / 曖昧さ回避 / 最適停止問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究成果は2点にまとめられる。 1点目はペアーズ・トレーディングにおいてポジションをとる最適なタイミングに関する研究についてである。この点については前年度までに概ね完成していたが、本年度はさらに精緻化を加えた。前年度までに得た成果では、ポジションをとる最適なタイミングを決定する境界はラプラス変換を用いて導き出した。しかし、ラプラス変換による解は必ずしも常に安定的に導かれるわけではない。そこで、異なるアプローチとして、積分方程式を導き出す方法を開発した。これは、Kitapbayev and Leung (2017)による手法を援用したものだ。ただし、彼らの方法はポートフォリオのパラメータが全て判明しているという仮定のもとで、最適停止問題に取り組んだものだ。本研究の目標の一つは、ポートフォリオのパラメータを誤って推定する可能性を考慮した頑健な手法を確立することだ。特にパラメータ・エラーに対するペナルティを相対エントロピーで与えた場合、凸リスク最適化と親和性が高いため、Bayraktar et al. (2010)による方法を援用できることに気づいた。その結果、本研究のようなケースでもうまく積分方程式を導き出すことができたことが成果の一つである。 また、2点目は取引コストに関する研究である。取引コストの研究はMagill and Constantinides (1976)により1970年代に提起されてから現在に至るまで多くの研究者の関心を集めてきた。取引コストを勘案した資産運用手法の確立の重要性は言うまでもない。本年度は特に最適消費投資問題に焦点をあて、長い歴史をもつこの研究の概要を、特に問題解法のアイデアと経済学的解釈を中心にサーベイを進めた。この結果は山嵜・吉川(2021)にまとめて公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最適停止問題の解を与える積分方程式の導出ができたことは大きな成果である。前年度までに得ていた解法よりもいっそう安定的な数値解が得られるからである。また、取引コストに関するサーベイを進めることができたことも大きな進展である。こうした成果はより精緻な取引戦略の構築につながることが期待できる。以上より、研究は概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
最適停止問題を効率的に解くためには,これを自由境界問題に還元することが重要な要件となる。そのためには境界のregularityを確立することが必要になる。今後はまずこの作業を完遂し、成果を論文で公表することを優先する。また、取引コストを勘案した問題設定の可能性について検討するなど、より現実的な取引戦略への拡張も試みる。
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Causes of Carryover |
本年度は新型コロナ・ウイルスの感染拡大に伴い、学会や研究打ち合わせにかかる出張予定が全てキャンセルとなった。そのため、次年度使用額が生じた。2021年度の秋以降で移動の自由がある程度確保できるようであれば改めて主に旅費として使用したい。
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Research Products
(2 results)