2019 Fiscal Year Research-status Report
DSGEモデルを用いた新興市場国における経済変動の決定要因に関する経済分析
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18K01695
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Research Institution | Dokkyo University |
Principal Investigator |
熊本 尚雄 獨協大学, 経済学部, 教授 (30375349)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 負債のドル化 / 通貨代替 |
Outline of Annual Research Achievements |
新興市場国は先進国に比べ、より大きな経済変動に晒されている。これには様々な要因が存在するが、その一つにドル化が挙げられる。なかでも債務のドル化、ならびに通貨代替の程度が経済変動(後退)に大きく影響することが知られている。 昨年度の研究により、新興市場国においては、通貨代替の程度は負債のドル化よりも大きな経済変動(景気後退)をもたらすことが明らかとなった。 これを受け、今年度は3ヶ国(インドネシア、フィリピン、ペルー)を対象にして、各国における自国通貨に対する外国通貨(米ドル)の相対的貨幣需要関数の推定を動学的パネル分析の手法を用いて行い、通貨代替が進展しているかどうかについて分析を行った。具体的には、非定常なパネルデータを利用する場合、貨幣需要とその決定要因の逆因果性の存在に起因する内生性の問題点を修正するFOLS(fully modified OLS)とDOLS(ダイナミックOLS)を用いて分析を行った。 その結果、各国において、(対外純資産に依存するリスクプレミアムにより表現される)名目金利差は通貨代替の程度に有意な正の影響を及ぼしており、自国通貨を保有することの機会費用が上昇すると、通貨代替の程度は増加することが明らかとなった。 このことは名目金利差(もしくは対外純資産)が貨幣需要に影響し、さらにはValadkhani(2008)が指摘しているように、産出量ギャップやインフレ率に及ぼす影響を通じて、長期的には各国における金利政策の有効性にも影響を及ぼす可能性があることを示唆する。したがって、これらの国における中央銀行は金融政策の有効性を改善させるためには、名目金利差の影響を考慮した上で金融政策を策定する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の目標として掲げていた分析の一部を行い、一定の成果を得ることができたが、分析に用いるモデルの精緻化については早急に対応したい。
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Strategy for Future Research Activity |
分析に用いるモデルのさらなる修正を行い、雑誌への投稿を随時行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
予定していた英語による論文校正を実施することができなかったため。
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