2020 Fiscal Year Annual Research Report
Economics Analysis for the Determinant of the Economic Fluctuations in Emerging Market Countries
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18K01695
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Research Institution | Dokkyo University |
Principal Investigator |
熊本 尚雄 獨協大学, 経済学部, 教授 (30375349)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 新興市場国 / 通貨代替 / DSGEモデル / ベイズ推定 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度の研究により、新興市場国においては通貨代替の程度は負債のドル化よりも大きな経済変動(景気後退)をもたらすことが明らかとなった。 これを受け、今年度は昨年度に分析対象国とした国のうち、アジア2ヶ国(インドネシア、フィリピン)を対象にして、Kumamoto & Kumamoto(2015)を修正した通貨代替型動学的確率的一般均衡(DSGE)モデルに基づくベイズ推定を行い、貨幣インデックスにおける自国通貨のウェイトと自国通貨と外国通貨間の代替の弾力性を直接的に計測することで、これらのパラメータで規定される通貨代替の程度を算出した。 その結果、先行研究で用いられている通貨代替の代理的な指標(国内居住者が現金として保有する外国通貨のデータは入手不可能であることから、自国通貨建て要求払い預金と外国通貨建て要求払い預金の合計に対する外国通貨建て要求払い預金の割合を使用)により分析対象国における通貨代替の程度を計測した場合には、インドネシアにおいては20.5%、フィリピンにおいては22.6%になる一方で、上記の推定方法で計測した場合には、インドネシアにおいては約7.5%、フィリピンにおいては約1.4%となることが示された。 この結果は、これらの国における国内居住者の外国通貨に対する選好の変化が外国の金融政策ショックの自国経済に及ぼす影響は小さいことを意味し、これらの国では通貨代替の程度が自国経済に与える潜在的な不安定要素とはなりにくいと示唆される。
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