2018 Fiscal Year Research-status Report
What Promotes Financial and Capital Market Development in Emerging Economies?
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18K01701
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Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
永野 護 成蹊大学, 経済学部, 教授 (20508858)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 新興国社債市場 / 新興国株式市場 / イスラム債市場 / 銀行―企業関係 / エージェンシーコスト / 情報非対称性 / 金融発展 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は新興国債券市場、株式市場、イスラム債市場、の3つの直接金融市場のデータセットの作成と実証分析を行った。新興国債券市場、株式市場のデータセットについては、中国、香港、台湾、インド、シンガポール、マレーシア、タイ、フィリピン、インドネシア、ベトナムの2000年から2017年までのデータセットを作成し、推計作業を実施することによる仮説検証を行った。イスラム債市場の研究については、マレーシア、インドネシアの同時期のデータセットを作成し、推計作業を実施することによる仮説検証を同様に行った。 データセットの作成とともに、これらの国・地域における債券市場、株式市場設立以降の歴史的経緯を、英Economist社等の資料をもとに調査し、政策面からの金融発展への影響を定性的に確認した。また、上記の金融資本市場での取引が増加している日系・欧州機関投資家へのインタビュー調査を実施し、2000年から2017年までの間に、どのような市場構造の変化と金融発展の深化が進行してきたのか、市場参加者から情報収集した。また、イスラム債市場については、特にマラヤ大学経済経営学部イズマイウ教授ら、マレーシア・セインズ大学のホーイ准教授らの協力を得て、イスラム債発行体の目論見書を収集し、事業目的とその後の経営パフォーマンスとの関係を検証した。 新興国の金融資本市場、金融発展の実証分析を進めるとともに、2017年度までに実施した銀行-企業関係の研究成果と、これらの金融発展の関係を検証する作業を実施した。これらは、新興国市場の研究過程において、銀行―企業関係がもたらす役割が大きいことが確認されたため、社債発行・株式発行と銀行借入の関係についての統計的な確認作業を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
独ゲーテ大学SAFE研究所、ドイツ連邦銀行経済分析局の協力により、ビューロ・バンダイク社データ利用の機会を受け、実証分析のためのデータセット作成を進めている。データセットの作成に時間を要したものの、推計作業が円滑に進捗したため、研究プロジェクト全体の進捗そのものは順調に進捗している。また、推計手法についても、ゲーテ大学での複数のセミナーに参加することで、資金調達企業の抽出方法についての知見を得ることができたため、これらをデータセット作成に応用した。 データセット作成には時間と労力を要したが、これらを用いた推計作業では、概ね事前に設定した仮説と整合的な結果が、得られたことが、順調なプロジェクト進捗の最大の理由となっている。その他、2017年度までに実施した実証研究に用いたデータセットが、フォーマットとして転用することが可能であったことも、データ整理の時間短縮に多大に貢献した。 研究の過程で、普通社債、普通株以外の担保付債券、制限情報付き証券等の発行数が、事前の予想を超えて多量であったため、これらのデータの取扱いを再検討した。これらの作業上、出現した新たな課題は、2019年度以降に検討を持ち越したため、昨年度のイレギュラーな作業時間の増加を回避することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の2年間では、推計作業の継続、ワーキングペーパーの作成、学会発表、学術誌への投稿、の4つの作業を進める。昨年度、進めた実証分析作業を今年度も継続し、新興国の金融資本市場の発展に関するすべての仮説検証を今年度中に進める。これらの結果をワーキングペーパーとしてまとめ、国内外でのセミナー、学会で報告を行い、研究プロジェクトが直面する、もしくは内在する課題を抽出し、整理、解決する。 初年度、当該研究を進める過程で新たに検出された課題として、債券、株式発行を行う発行体企業の主取引銀行との関係がある。これらの企業は直接金融市場へアクセスする以前は、当然のことながら銀行借入依存型のファイナンス活動を行っており、こうした銀行―企業関係が与える社債発行、株式発行への影響を確認するため、銀行借入データを追加的に検証する。 推計作業の継続、ワーキングペーパーの作成、学会発表、学術誌への投稿、の4つの作業のうち、上記の課題対処の後、まず学術誌への投稿を行う。次に、2017年度までの研究成果と2019年度までに得られた成果の一部を、学術書籍として刊行する。
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Causes of Carryover |
今年度はドイツ連邦銀行経済統計局からデータベース利用の便宜を受けたため、今年度の研究プロジェクト初年度のデータベース用費用を次年度以降に繰り越した。現在、使用中のデータベースは2017年決算・会計年度までが収録対象であるため、2019年、2020年にそれ以降のデータ更新、さらに各国商業銀行の資本構成、負債構成データ入手のため、これらの予算を使用する。
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Research Products
(5 results)