2018 Fiscal Year Research-status Report
Developing Evaluation Models of Environmental Policies under Ambiguity by using Real Options Approach and Their Applications
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18K01714
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
辻村 元男 同志社大学, 商学部, 教授 (40335328)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | リアルオプション / 曖昧性 / 資本投資 / 配当政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018-2020年度にわたる本研究課題「曖昧性を考慮したリアルオプション・アプローチによる環境政策評価モデルの開発と応用」において,研究期間初年度は,主に以下の2つの研究成果を得た。 先ず,将来のアウトプットへの需要に曖昧性が存在する資本投資の分析を行った研究を拡張し,投資費用の曖昧性も考慮した資本投資について分析を行った。両研究とも曖昧性をショケブラウン運動を用いて表現し,最適な資本投資のタイミングとその規模について考察した。分析の結果,企業のマネージャーが曖昧性回避的であれば,アウトプットの需要と投資費用のボラティリティーが高くなるほど資本投資が抑制されることを示した。さらに,曖昧性回避の度合いが大きくなると,資本投資が抑制されることも示した。この研究では,資本の拡張のみを考察しており,資本の縮小も考慮した企業の投資行動についての分析が課題として残された。 次に,企業の投資行動を異なる視点から分析するため,企業の配当政策について分析を行った。将来のキャッシュリザーブに曖昧性が存在し,資本注入が可能な場合について考察を行った。分析の結果,資本注入無い場合は,企業のマネージャーの曖昧性回避度合いが大きくなるほど,配当支払いが促されるが,資本注入が可能となると,企業のマネージャーの曖昧性回避度合いが大きくなるほど,配当支払いが抑制される。また,資本注入が無い場合,キャッシュリザーブのボラティリティーに対して,配当支払の閾値は逆U型となるが,資本注入が可能となると,キャッシュリザーブのボラティリティーが大きくなるにしたがい,配当支払いが抑制されることを示した。この研究では,企業の資本投資については考慮されておらず,資本投資も含めたキャッシュリザーブの最適な使い方についての考察が今後の課題として残されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は研究実績として,1本の論文を公刊し(近刊),国際会議(The 22nd Annual International Real Options Conference),京都大学数理解析研究所RIMS共同研究や日本リアルオプション学会研究発表大会で研究発表を行った。本年度に研究計画として予定していた汚染物質排出削減投資政策については,その基礎となる研究成果を発表したが,当該研究の成果については2019年度に国際会議(The 23nd Annual International Real Options Conference)で発表することとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度に実施した研究を,以下のように拡張して研究を進める計画である。 1.アウトプットの需要に曖昧性が存在する場合における最適な資本投資を分析した研究を,資本の拡張だけではなく縮小も考慮し,最適な投資戦略を導き出す。 2.アウトプットの需要に曖昧性が存在する場合における最適な資本投資を分析した研究に,アウトプットの副産物として汚染物質の排出・蓄積を考慮する。汚染物質の蓄積から損害を被るため,central plannerは社会厚生を最大とするように汚染物質削減投資を行う。本研究では汚染物質削減に対する技術進歩を考慮する。ただし,技術進歩に対して曖昧性が存在するため,central plannerの問題は,曖昧性下における社会厚生最大化問題となる。本研究ではこの問題をHansen-Sargent型のロバスト制御問題として定式化し,最適な汚染物質削減投資を求める。なお,技術進歩については,先ずは連続的な技術進歩を考慮し,幾何ブラウン運動過程に従う場合を考察する。次で,離散的な大きな技術進歩が発生する場合も考慮し,技術進歩がジャンプ拡散過程に従う場合を考察する。この研究が順調に進めば,アウトプットの需要にも曖昧性を考慮した考察も行う。
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Research Products
(5 results)