2018 Fiscal Year Research-status Report
対外債務と通貨エクスポージャー:債務危機への非伝統的アプローチ
Project/Area Number |
18K01715
|
Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
藤井 英次 関西学院大学, 経済学部, 教授 (20321961)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 対外債務 / 債務危機 / 原罪 |
Outline of Annual Research Achievements |
中低所得国が抱える原罪の問題と債務危機、対外的な起債通貨の選択、対外債務と国内マクロ経済環境の関係等に関する先行研究を調査し、重要な理論的示唆と知見を整理しながら本研究における分析の焦点の明確化を図った。起債通貨の選択が債務負担の重課だけでなく、マクロ経済の循環にまで影響することをいくつかの理論モデルが示唆しているが、十分に実証されておらず、本研究では起債通貨ポートフォリオの選択、為替変動のサイクル、消費の平準化の関係性に照準を合わせて検証するという結論に至った。 上記と同時進行で世界銀行のInternational Debt Statistics、国際通貨基金のInternational Financial Statistics、およびIlzetzki, Reinhart and Rogoff (2017)の為替レジームデータベースから関連データを収集し、ブレトンウッズ体制崩壊後の非先進国における対外債務の起債通貨ポートフォリオの実態とその長期的トレンドの分析を開始した。これまでのところ原罪の問題は長期的にも解消されておらず、特にユーロ導入後は外債の割合の増加とドル一極化傾向がより強くなっていることが分かった。 また、国際水準の研究とするため、ベルギーのUniversite Catholique de Louvainで開かれた国際学術集会に参加し、関連分野の研究者と途中成果の交換や議論を行った。
Ilzetzki, E., C.M. Reinhart, K.S. Rogoff. 2017. Exchange Arrangements Entering the 21st Century: Which Anchor Will Hold? NBER Working Paper No. 23134.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
先行研究・文献調査とデータ収集・整理を進めており、具体の実証分析にも着手して、今後分析を発展させるための土台を着実に構築しつつある。
|
Strategy for Future Research Activity |
初年度に遂行した先行研究・文献調査とデータ収集・整理を土台として、今後は本格的に独自の分析を展開する。2019年度の計画は大きくは次の二つの柱からなる。 第一に対外的な起債通貨の選択と国内マクロ経済環境の関係に重要な示唆を提示する先行研究のいくつかのモデルから、起債通貨ポートフォリオの選択、為替変動のサイクル、消費の平準化の関係性について理論的考察をさらに進め、計量分析で実証可能な重要な仮説を考案する。 第二にデータの整理・分析をさらに進め、ブレトンウッズ体制崩壊後の非先進国における対外債務の起債通貨ポートフォリオの実態とその長期的トレンドを明らかにしたうえで、上記の関係性についての計量分析に着手する。また、学会やワークショップへの参加を通じて海外の専門家と積極的に研究交流を行い、研究の質向上に努める。 上記の成果を基に2020年度には研究成果をまとめたワーキングペーパーを執筆して国内外の学会で報告を行い、様々なフィードバックを受けたい。最終年度の2021年度は様々なフィードバックを反映させた研究論文を完成させて国際学術雑誌への投稿を行い、研究成果を国際的に広く発信する。
|
Causes of Carryover |
おおむね計画どおりに支出しており、次年度への持ち越し額は少額である。次年度使用が生じた主な理由として、航空券の価格などは絶えず変動しており、事前の予定額と実際の支出額を完全に一致させるのは困難であること等が挙げられる。繰り越した研究費は今後の海外出張費等に使用する予定である。
|