2020 Fiscal Year Research-status Report
対外債務と通貨エクスポージャー:債務危機への非伝統的アプローチ
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18K01715
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
藤井 英次 関西学院大学, 経済学部, 教授 (20321961)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 対外債務 / 原罪 / 消費のボラティリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
主に世界銀行や国際通貨基金等から債務・マクロ経済データを、Powell and Thyne (2011)から政治の安定度に関するデータを収集し、中低所得国における対外的な起債通貨の選択とマクロ経済環境の関係等に関する実証分析を進めた。 暫定的分析結果からは、1980年以降の非先進国の対外債務の起債通貨ポートフォリオの特徴として、しばしば指摘されてきた外貨建て債務シェアの増加に加えて、ポートフォリオの分散度の低下を伴うことが分かった。また、そのような通貨選択のトレンドはユーロ導入の前後で大きく異なることも判明した。リスク回避の観点から経済学理論が提唱するポートフォリオの分散とは反対に、実際には通貨ポートフォリオの集中が進んでおり、米ドルへの過度の集中はメリットとデメリットの両方を途上国にもたらしていると考察される。 また、上述の結果の経済厚生上の示唆として、現在負債ベースの実効為替レートのcyclicalityが所得変動下の家計の最終消費に与える影響についての計量分析に取り組みつつある。
Powell, Jonathan M. and Clayton L. Thyne. 2011. Global instances of coups from 1950 to 2010: A new dataset. Journal of Peace Research,48, 249-259.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルス感染症の影響で海外での研究報告の機会を逸したが、個別に海外の研究者からフィードバックを受けるなどして、研究そのものはおおむね計画したペースで進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
債務ベースの実効為替レートが家計消費のダイナミクスに有意な影響を及ぼすのか否かについて計量分析を進める。特に所得と消費の内生性を考慮した計量分析は技術的にチャレンジングな面もあり、信頼性の高い推定を目指して工夫を重ねたい。対外債務は所得ショックの一時的なバッファーとなり得るため、家計の消費行動は所得ショックと対外債務の両方の影響を受けると考えらえ、それらの効果を定量化することを目指す。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症の影響により、国際学会や海外出張を取りやめざるを得なくなったため次年度使用額が発生した。今後、国内外の状況が好転すれば研究費を使用して積極的に国際学会等に参加し、海外の研究者との交流を通じて研究の更なる質向上を図りたい。
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