2023 Fiscal Year Annual Research Report
External debt and currency exposure: An unconventional approach to debt crises
Project/Area Number |
18K01715
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
藤井 英次 関西学院大学, 経済学部, 教授 (20321961)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 対外債務 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度は海外の大学で研究成果の報告を行い、成果論文を国際学術誌に投稿、査読審査と修正再提出を経て、最終的にReview of World Economicsに公刊した。研究全体の主な成果は以下の通りである。 1980年以来、新興・途上国の対外公的債務はその大半が外国通貨建てで構成されてきたが、米ドルのシェアはユーロの導入前よりも導入後の方が一層拡大しているという意外な事実が判明した。更に、ユーロ誕生以前(1980-2000年)には多くの国が債務通貨ポートフォリオを分散させる傾向にあったのに対して、ユーロ誕生後(2001-2017年)は逆に通貨ポートフォリオの集中を推進したことも分かった。 対外公的債務に占める外貨建て債務の割合を一定として、通貨の構成が一通貨に集中することの効果を計量分析した結果、ポートフォリオの集中は債務ベースの実効為替レートの従景気循環性を強める効果を有することが判明した。更に、債務ベースの実効為替レートの従景気循環性は、債務国家計の最終消費の落ち込みを大きくすることで、消費のボラティリティを増幅する有意な効果を持つことが分かった。 対外債務問題について国際社会は長らく有効な改善策を見いだせずにきたが、リスク回避の観点からは米ドル等のハードカレンシーへの依存を止めるのが困難なのは当然と考えられる。これに異を唱えるよりも、制約条件として受け入れた上での状況改善、特に債務国の家計にとっての経済厚生に資する債務の在り方を本研究で模索した。外貨建て債務の負担と景気の循環の関係性に着目して検証した結果に基づき、これまで当然のように米ドルに集中してきた債務の通貨ポートフォリオを分散させることが家計消費の安定に有益であることを政策的示唆として示せたのが本研究の重要な成果であり、今後のソブリン債発行戦略に一石を投じることを期待したい。
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