2018 Fiscal Year Research-status Report
企業のソフト情報が株式市場の価格形成へ及ぼす影響に関する実証研究
Project/Area Number |
18K01716
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
阿萬 弘行 関西学院大学, 商学部, 教授 (70346906)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ソフト情報 / 株式市場 / マスメディア / 投資家行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、投資家の利用する企業に関するソフト情報が、株価変動特性や流動性に与える経済的効果について実証的に分析していく。これまで多くのファイナンス研究で一般的に重視されてきたのは、利益業績などの決算情報に代表されるハード情報である。それに対して、本研究では、ソフト情報として幅広く、マスメディアにおいて伝達されるニュース・娯楽が一体化した形での情報、企業による広告宣伝などのマーケティング活動による情報などを分析対象とする。典型的なケースとして、経済・ビジネスニュースが、一般大衆向け媒体やテレビ報道の中で、娯楽性と融合された形で報道されることが多い。理論的観点から、行動ファイナンスの文脈における注意力仮説の下では、ソフト情報は、個人投資家に代表される非情報トレーダーの企業情報認知度を向上させることで、株価形成の効率性や流動性を高める効果をもつ。他方で、ソフト情報は、その本質的なノイズ特性から、株式の本源的価値とは乖離した価格評価や非効率な株価形成を引き起こす効果が想定される。 今年度は、各種のソフト情報に関するデータベースを収集・整備し、株式市場の関連指標への効果を分析するための準備を実施した。まず、第一に、これまで行ってきた企業広告の取引高等への効果を測定する共同研究を改良を重ねながら進めている。第二に、新聞記事を用いたマスメディア報道と公式な企業ディスクロージャー情報を利用して、市場流動性への効果を見るための共同研究を進めている。第三に、個人投資家の投資行動を見るために、投資信託データによる分析を予定しており、そのために、ファンドデータの整備を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分析に必要なデータベースは概ね利用可能な状況となっている。研究課題に関係する複数のプロジェクトは、共同研究者とともに円滑に進展させている。また、これまでの関連研究の継続及び新規研究の準備的な計量経済分析も順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
全般的に、今後も引き続き、現在の研究プログラムを発展させていく。学会報告やセミナー発表を経て、専門学術誌への投稿を目指していく。企業広告に関する研究は、学術誌での改訂・公刊につなげていきたい。市場流動性に関する研究については、学会・セミナー報告を行っていく。投資信託に関する研究は、学術誌での公刊に繋げていくとともに、個人投資家の投資行動を見るための新たな分析にも着手したい。
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Causes of Carryover |
理由は、必要なデータベース・資料が学内設備を通じて利用可能であった点と電子データの利用により情報整理の人件費が不要であった点である。 ソフト情報に関する追加的なデータベースの整備、セミナー・学会参加のための費用に充当していく。
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