2020 Fiscal Year Research-status Report
Dynamic Analysis on the Newly Industrialized Clusters and Market Creation
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18K01722
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
根岸 秀行 富山大学, 人間発達科学部, 名誉教授 (30192694)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 岩行 和光大学, 経済経営学部, 教授 (40247193)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 産業集積 / 引揚 / 産地 / 戦後復興 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者は、これまでに実施した科研研究を通じて収集した岐阜への引揚者資料(国立公文書館所蔵「引揚者在外事実調査表」)の整理とデータベース化作業を行っている。これをもとに、衣服取り扱いの経験を持たない引揚者がヤミ市規制が解除された後、なおもこの生業にこだわり続け、結果として、洋装既成服の製造・販売(→アパレル)という新産業・新産地形成の主力となった経緯について解明中である。近年、海外在住研究者らにより上記資料を用いた成果が公開され始めており、これらを参照しつつ研究の深化をはかっている。また、この新産業が衣服という生活の根幹にかかわっており、この形成は戦後復興期日本における文化的変容の一環であったとみる観点から、風俗・服飾史、流通変革に関する研究史を整理している。 他方、研究分担者及び代表者は、1960年代までの戦後復興期に日本の海外再進出を担った海外拠点の設立にまい進した旧財閥系商社の海外進出行動と岐阜アパレル業者との関係も検討している。 上記の成果の一つとして、研究分担者と代表者は共同で「戦後岐阜アパレル産地とアジア引揚者―「引揚者在外事実調査票」(1956年)を用いて―」を『和光経済』53巻3号、2021年3月、誌上に公開した。 しかし、この作業と並行して、実施さるべき現地図書館(岐阜県図書館、岐阜市立図書館)および国会図書館における戦後岐阜に関係する衣服取扱いおよび縫製関係の資料収集、ヒアリング代替資料としての中小企業の会社史、当事者の自分史等の資料調査は昨今のコロナ状況下で難航した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究代表者の体調不良とコロナ禍による移動困難により調査が遅滞した。この結果、代表者、分担者ともに自宅外での調査(現地、図書館・資料館とも)・打合せ等について、当初計画の進行も遅れた。しかし、既収集資料の整理とネットを通じた文献調査に比重を移し、共同で岐阜アパレル産地形成の推進者であった戦後岐阜の引揚者データの分析を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
本課題は、中小企業集積研究とオーラルヒストリー研究という二つの課題を同時追究するものであった。しかし、後者のための当事者ヒアリングを模索したところ、現下のいわゆる’コロナ禍’が継続する中で高齢者を対象とするヒアリングはかなり困難なものと判断された。そこで、資料的には既収集のヒアリングデータを再整理するとともに、戦後復興期日本における文化的変容の一環として環境要因分析の比重を高め、風俗・服飾史、流通変革に関する研究史(岐阜など現地の自分史や社史を含む)を整理することで理論的精度を高める。 また、研究分担者と協議しつつ研究期間の延長を検討する。
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Causes of Carryover |
いわゆる‘コロナ禍’によって諸作業(移動、高齢の当事者ヒアリング等)が困難となり、代表者・分担者ともに文献調査と既収集資料の整理等にとどまり、研究が遅滞した。今後のコロナ禍の先行きは不透明であるため、既収集資料の整理に努めるとともに、研究の力点を新産地形成に向けた主体的要因とその環境要因との関連の解明に移し、文献研究の範囲を拡大する(風俗・服飾史、流通変革の研究史、関連業界史、岐阜など現地の自分史・社史など)。文字起し作業等について、可能な限り外部委託を活用する予定である。
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