2018 Fiscal Year Research-status Report
1960年代の中国経済と化学繊維生産設備の日本からの導入問題
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18K01723
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
久保 亨 信州大学, 人文学部, 特任教授 (10143520)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 中国 / 第二次世界大戦後 / 繊維産業 / 化学繊維 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究課題に関する基本資料の収集に努めるとともに、内外の学会に参加し知見を広めた。とくに重要な意味を持ったのは、2018年8月にアメリカのボストンで開催された世界経済史会議WEHCへの出席であり、グローバルな視野の中で本科研の課題が持つ意味を鮮明にし、戦後中国経済史に於ける研究の課題と方法をめぐって世界の研究者と交流する機会を得た。 電子書籍の中の1章として、2018年度には下記の論文を公表することができた。Toru KUBO, Changing Patterns of Industrialization and Emerging States in Twenteenth Century Chia, in K. Otsuka & K.Sugihara eds.,Paths to the Emerging State in Asia and Africa, Springer Open, 2019, pp.141-167.近現代中国の経済発展を支えた要因として国際経済、民間部門、政府部門の3つを挙げるとともに、それぞれの要因が果たした相対的な意味を考慮し、1) 国際経済主導の発展(1880年代~1910年代)、2) 民間主導と政府の保護政策の下の発展(1910年代~1930年代)、3) 政府主導、戦時統制経済・計画経済の下の発展(1930年代~1970年代)、4) 再び国際経済主導の発展(1980年代以降)という4つの時期区分を提示し、それぞれに説明を加えた。さらに4つの時期を通じて見られる中国の工業化の特徴として、農村手織綿布業に代表されるような労働集約型工業化と上海の綿紡織業、満洲の製鉄業に代表されるような資本集約型工業化とが同時に進展していたこと、その背景には、欧州の二倍の領域に、条件の異なる多様な地域経済が並存しているという条件が存在することを指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初に設定した目標に従い、基本的資料の収集を進めるとともに、その分析にあたって必要とされる関連分野の情報を広く集め参照する作業にも着手している。千葉県幕張にあるアジア経済研究所の図書館、東京都本駒込にある東洋文庫の図書館などを訪れ、多くの文献資料類を閲覧し、コピーなどで収集することができた。 同時に並行して取り組んだことは、論文「中国近現代経済史をどう捉えるか」(堀和生・萩原充編『「世界の工場」への道――20世紀東アジアの経済発展』京都大学学術出版会、2019年度刊行予定)の執筆である。これは、19世紀末から21世紀初めに至る中国経済の発展過程を工業と農業という2つの方面から全般的に考察した論考であり、その中で本科研が課題とする繊維産業の位置づけを改めて明確に示したことは、有意義な成果につながるものであった。さらに本科研の1950-60年代中国経済史研究の基本的背景となる問題についても研究を進め、「経済学者の社会主義憲政論--1957年の意見書草稿をめぐって」(中村元哉編『憲政から見た現代中国』223~244頁,東京大学出版会,2018年5月)を発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究課題に関連する資料を、中国に於いて収集する可能性を追求するとともに、日本国内に於いても、引き続き資料の収集と分析を進め、学会などで研究課題に関する研究報告を行い、研究論文の執筆に着手する。 また次年度、2019年8月に上海社会科学院経済研究所が主催する国際シンポジウム「全球視野下的中国近現代経済発展路径、制度与思考」(グローバルな視野における近現代中国経済の発展の道筋と制度、思索)に出席し、本科研の課題に即した報告を行うとともに、中国内外の研究者と議論を深める。
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