2018 Fiscal Year Research-status Report
The Study of engineer education in modern China mining and manufacturing industry
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18K01727
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
富澤 芳亜 島根大学, 学術研究院教育学系, 教授 (90284009)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 近代中国の炭鉱業 / 開ラン炭鉱 / 中興炭鉱 / 中華人民共和国の紡織業 / 中華人民共和国期の綿製品輸出 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず炭鉱業に関しては、2018年8月3日に合衆国ボストンにて開催されたⅩⅧth World Economic History Congressにおいて、「Labor Management Systems at the Kailuan and Zhongxing Coal Mines during the 1920s and 1930s」を報告した。日本資本南満洲鉄道経営下の撫順炭鉱では、1930~40年の企業直轄制度期には、可採率向上の必要性と日本人専門職員層の存在により、請負制度は採炭と募集の一部に残存するのみとなった。しかし華北の中英合弁の開ラン炭鉱や、中国資本の中興炭鉱では、請負の可能な多くの不熟練労働が、採炭や運搬で残っていた。また請負組織たる「包工櫃」内部でも、二頭→査頭→包工頭へと上部の管理者となるにつれて専門的な知識が必要となった。多くの包工頭は、熟練労働者としての実地経験か、鉱業学校在籍経験を持っており、親族間で継承されていた。こうした請負制度の管理者を、全面的に社員で置き換えるためには、外部の階層的な教育システムが必要となったが、華北の炭層の情況ならば部分的、選択的に請負制度を利用しても利益を見込めた。そのため両鉱にとって、包工制の全面的な廃止の誘因は無かった。 次に紡織業に関しては、2018年12月7日に京都大学人文科学研究所の「近現代中国における社会経済制度の再編」共同研究班において、「1950~70年代の中国の綿製品輸出について-日本紡績協会の調査から見えるもの」を報告し、日本語と中国語の資料を用いつつ、1960年代後半に中国が、日本を超えて世界第一位の綿製品輸出国となる過程を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、清末から中華人民共和国期(1900~1970年代)までの炭鉱業と紡織業での技術者養成を明らかにし、世界最大の石炭生産、繊維生産の基礎を築いたのかを解明することにある。 まず炭鉱業に関しては、8月3日に合衆国ボストンにて開催されたⅩⅧth World Economic History Congressにおいて、開ランと中興両炭鉱の戦前の労務管理のあり方について「Labor Management Systems at the Kailuan and Zhongxing Coal Mines during the 1920s and 1930s」と題する報告をし、コメンテーターの岡崎哲二東京大学教授をはじめとする参加者より貴重なコメントを得ることができた。 次に紡織業に関しては、12月7日に京都大学人文科学研究所の「近現代中国における社会経済制度の再編」共同研究班において、「1950~70年代の中国の綿製品輸出について-日本紡績協会の調査から見えるもの」を報告し、コメンテーターの渡邊純子京都大学教授をはじめとする参加者より貴重なコメントを得ることができた。 資料調査については、2018年9月16日~26日まで中国上海市の上海市档案館と上海社会学院で資料調査をおこない、中華人民共和国期の紡績業に関する貴重な一次史料を収集した。また中国の古書店を通して、1990年代に出版された紡織企業や炭鉱の企業史の収集も続けており、順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度も8月上旬に、中国上海市において2週間の資料調査を予定している。現在、中国での一次資料(「档案」)の調査環境には厳しいものがあり、特に中華人民共和国期の一次資料については、複写を拒否される場合が多い。昨年の資料調査時においても、上海市档案館において、申請したほぼ全ての資料の複写を拒否されるという事態もあった。そのため筆写もしくはパソコンに打ち込む方法しかない。これには多大の時間を要すると思われる。 また研究分析がまとまった部分については、研究会や学会での報告を続けていく。とりあえず2019年10月の広島史学研究会の東洋史部会での報告を決定している。今後は中国の地方の文書館(陝西省档案館や河北省档案館など)に所蔵されている資料の調査も進めたいと考えている。しかし上述したような資料公開の厳しい状況もあり、予断を許さない。 一次史料の収集と並行しつつ、1990年代に公刊された紡績と炭鉱の各企業史資料の収集を、中国の古書店のネットワークを通して進めていく。
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Causes of Carryover |
本年の2~3月に中国における追加の資料調査を予定していたが、昨年度から所属機関の入試の責任者(島根大学教育学部入試部門長)に就任し、折り悪く入試業務の繁忙期と重なってしまい、海外出張の時間を確保できなかった。そのため今年度の海外における資料調査の期間を、夏期休業期に長期間設定したいと考えている。
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Research Products
(4 results)