2019 Fiscal Year Research-status Report
The Study of engineer education in modern China mining and manufacturing industry
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18K01727
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
富澤 芳亜 島根大学, 学術研究院教育学系, 教授 (90284009)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 近代中国の紡織業 / 中国の繊維製品輸出 / 中国の技術者養成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、近代中国における工業技術が、社会主義化などの政治的な変動を超えて継承されたことの解明にある。 これを技術者養成の観点から明らかにしたのが、富澤芳亜「中国の繊維産業:技術者養成からの視点」堀和生・萩原充編『“世界の工場”への道:20世紀東アジアの経済発展』京都大学学術出版会、199~223頁、2019年5月である。この論文では、これまでの研究で解明した中国が日本法人在華紡との激しい競争を通して、独自の技術者養成体系を有したことを前提としている。こうした紡織工業教育機関は、戦時中には国民政府統治区や上海の租界へと避難することで技術者養成を継続した。人民共和国建国後には、紡織工業部のもとで、戦時・戦後期に増加した教育機関を統合して教育資源を集約することで、大量の技術者を計画養成して生産の拡大に対応した。こうした教育を担当したのは民国期から継承された技術者だった。1950年代の汎用性の欠如したソ連式カリキュラムの導入や、60年代からの政治運動の続発による停滞などの問題はあったが、改革開放期までには紡織工業教育も安定し、その後に技術者養成は爆発的に拡大してゆく。こうした技術的な条件下で、1950年代からの綿製品輸出は可能となったことを明らかにした。 次に資料収集の面では、紡織工業製品輸出に着目して、2019年8月4日~17日に上海市档案館での調査を行い、着実な成果をあげることができた。その一部は、富澤芳亜「1950~70年代の中国の綿製品輸出について-日本紡績協会の調査から見えるもの」、2019年度広島史学研究会大会東洋史部会、2019年10月27日、広島大学、東広島市にて報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は、5月に「中国の繊維産業:技術者養成からの視点」を公刊し、【研究実績の概容】で記したように、中華人民共和国の計画経済期における紡織技術者養成の全貌を明らかにすることができた。次の課題として、繊維製品、特に綿布輸出について調査と論文執筆をすすめた。そして、その成果の一部を、学会にて「1950~70年代の中国の綿製品輸出について-日本紡績協会の調査から見えるもの」(2019年度広島史学研究会大会東洋史部会、2019年10月27日、広島大学)、「戦時期から計画経済期の中国における紡織技術者の養成」(2019年度社会経済史学会中国四国部会島根大会、2019年11月30 日、島根県労働会館)として報告することができた。 しかし自然災害や感染症の流行といった困難にも直面している。昨年度に引き続き上海市档案館で、2019年8月4日~17日にかけて調査を行った。上海市档案館において、中華人民共和国期の資料は、上海市による作成のもの以外では、複写が許可されない。そのため、国務院や国家経済委員会の重要な指示も、筆写せざるを得ない。また昨年の資料調査中には、台風9号(レキマー)による档案館の突然の臨時閉館などもあり、予定が遅れることになった。そのため今年に追加調査を計画していたが、今年1月からの新型コロナウイルス感染症の流行により、予定していた上海市档案館への調査を中止せざるを得なくなった。 現地での調査は、こうした悪条件が重なってはいるが、古書店やインターネットなどを通して、当時の資料を入手しており、これを用いて分析を続けている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在の新型コロナウイルス感染症の流行のため、順調な推進は困難となっている。まず国内の主要な中国関連の図書館(東洋文庫、東京大学東洋文化研究所、京都大学人文科学研究所)は、全て利用ができなくなっている。また勤務先の島根大学から、島根県外への出張を原則禁止されている。そのため国内の関連資料へのアクセスは、非常に難しい。 また本研究では、上海市档案館所蔵の一次史料の利用を前提としているが、現状では中国への渡航はほぼ不可能である。国内、国外への移動は、ほぼ出来ない状態にある。これが解消されない限り、資料収集では、古書店などを経由しての収集につとめるしかない。またこれまで収集した資料の分析にもつとめたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の流行により、2020年2月、3月に予定していた出張を中止せざるを得なかったために次年度使用額が生じた。今年度の資料収集費に充てたい。
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Research Products
(5 results)