2020 Fiscal Year Research-status Report
戦後復興期日本の経済政策と企業経営-経営史的視角による再検討-
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18K01728
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
北澤 満 九州大学, 経済学研究院, 准教授 (10362261)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 産業史 |
Outline of Annual Research Achievements |
当年度においては、新型コロナウイルス感染症の影響により、予定していた学会報告、資料調査ができなくなるなど、大きな影響を受けることとなった。ただ、こうした状況下においても、前年度までに収集していた資料の整理、分析を行い、研究協力者である木庭俊彦研究員(財団法人三井文庫)とも、オンラインによる打ち合わせを行うことにより、当初予定していた論文について、完成させることができた(北澤満・木庭俊彦「戦後復興期の田川炭鉱」『三井文庫論叢』第54号、2020年)。これまでの戦後復興期経済史研究において、傾斜生産について言及してきた論文は多いが、そのほとんどが、個別炭鉱経営の経営分析には立ち入ることができていなかった。本論文では、これまで用いられてこなかった炭鉱企業の内部資料を利用することで、三井鉱山田川炭鉱の経営動向について、詳細に明らかにした。田川炭鉱が、当該期の復興(特に前半期)において、出炭数量的には大きく貢献したものの、戦前来の出炭により炭鉱の老朽化が進行しており、そのために石炭の質、コストなどの点で、非常に厳しい状況に陥ったことを、明らかにした。 上述の通り、他機関における資料収集についてはほとんど進めることができなかったものの、古書店からの購入、オンライン・データベースの利用、および所属機関である九州大学附属図書館の所蔵資料などを幅広く収集・整理する作業も行った。次年度においては、これらの資料を利用しつつ、さらなる業績を挙げていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定している論文を刊行できたという点では、予定通りに進捗したということができる。他方で、新型コロナウイルス感染症の問題により、予定していた学会報告、資料収集、打ち合わせなどができなかったことにより、作業全体として遅れが生じたことは否めない。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、研究費を繰り越しての研究期間となる。2020年度までに収集した資料を分析しつつ、さらなる資料収集を行うことで、三井鉱山以外の企業について、戦後復興期炭鉱経営の考察を行っていきたい。前年度と同様、資料収集、打ち合わせなどについては、大きな障害が残ることが想定されているが、これについてはオンラインの利用、九大所蔵資料の収集などにより、補っていくことを予定している。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の問題により、2019年度末より予定していた資料調査、打ち合わせ、学会報告等がほとんどできなかったことによる。2021年度使用計画としては、可能であれば上記用途による出張旅費として用いることが最善ではあるが、前年度同様に困難であることも十分予想される。その場合は、古書資料などを博捜することで、さらなる研究資料を得ることに使用していきたいと考えている。
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