2022 Fiscal Year Annual Research Report
Reconsideration of Economic Policies and Corporate Management in Post-War Reconstruction Era Japan from a Business Historical Perspective
Project/Area Number |
18K01728
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
北澤 満 九州大学, 経済学研究院, 准教授 (10362261)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 経済史 / 産業史 / 経営史 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度は、研究代表者、および研究協力者による研究について、とりまとめ作業を行った。 研究期間全体を通じては、戦後復興期石炭産業史資料のうち、三井鉱山株式会社の経営資料、とりわけ九州地方諸炭鉱の内部資料の収集・整理・分析を、進めることができた。具体的には、研究協力者による、戦後復興期三井鉱山の再建整備に関する詳細な分析、そして、両者の共著による、三井鉱山田川鉱業所(田川炭鉱)の出炭動向についての考察などが、主たる成果として挙げられよう。 前者においては、これまで炭鉱企業に限らず、資料的な制約からほとんど研究が進展していない財閥系企業の再建整備について、多くの一次資料を用いて明らかにした点で、大いに意義があるといえる。それだけにとどまらず、従来、再建整備においては子会社・関係会社株式処分益が大きいとされてきたが、新勘定からの利息収入も無視できない大きさを有したこと、また、持株会社整理委員会による株式処分代金が、損失補填だけでなく、新勘定の資金不足緩和にも役立っていたことなど、新たな知見が多く付け加えられている。 後者の業績においては、三井鉱山の旧蔵資料、および日本石炭協会九州支部資料など、多数の一次資料や、同時代の統計資料を駆使しつつ、戦後復興期における田川炭鉱の出炭動向を考察した。田川炭鉱が、出炭量の面では他の大炭鉱と比較して早期に回復したことを指摘し、その背景に労働力の多投のほか、相対的には良好な資材の獲得、周辺諸炭坑での請負掘りなどがあったこと、その半面として、田川の坑内状況は悪化しており、生産性・炭質とも、同時期の他炭鉱と比較しても悪化が目立ち、またそれは統制撤廃後も大きく変わらないこと、などを指摘することができた。いずれも、今後の戦後復興期石炭産業史、とりわけ炭鉱経営史の分析を深化させていくうえで、重要な論点の提起となったと考えている。
|