2018 Fiscal Year Research-status Report
戦前期東京・大阪株式市場の統合過程と価格形成機能の数量的分析
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18K01734
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
花井 俊介 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (70212149)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野田 顕彦 京都産業大学, 経済学部, 准教授 (80610112)
前田 廉孝 慶應義塾大学, 文学部(三田), 准教授 (90708398)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 日本経済史 / 計量ファイナンス / 時変計量経済モデル / 東京株式取引所 / 大阪株式取引所 / 情報効率性 / 営業報告書 / 取引所経営 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の初年度にあたる本年度は,使用する史料の収集と分析の準備に力点を置いた。その作業内容は,以下3点に集約できる。 第1に,史料の調査を主に担当している研究代表者(花井)と研究分担者(前田)は,東京・大阪両株式取引所の営業報告書を収集し,記述内容を比較・検討した。この作業より両株式取引所の営業報告書は記載内容が質・量ともに大きく異なったことを確認した。なかでも株価と取引量に関する記載内容は,東京株式取引所が大阪株式取引所より圧倒的に充実し,両株式取引所の単純な比較は史料上の制約から容易でないことが判明した。そこで,東京株式取引所の営業報告書は大阪株式取引所のそれより長期間をカバーしていることも踏まえ,本研究課題では東京株式取引所を対象とした分析を優先させることにした。 第2に,研究代表者(花井)と研究分担者(前田)は,戦前期の金融市場における東京・大阪両株式取引所の位置付けを確認するために必要な史料の収集を実施した。その特筆すべき成果には旧東京商工会議所所蔵史料の収集が挙げられ,東京株式取引所調査課が毎月編纂した「全国取引所営業概表」(1919~30年)を入手した。本史料は,対象期間こそ約12年分と限られるが,全国全ての株式取引所と商品取引所の取引データを網羅的かつ月次で収録する。 第3に,時変計量経済モデルに基づく分析を主に担当している研究分担者(野田)は,第1の作業から作成予定の株価データを次年度以降に分析するために必要なコンピュータープログラムを作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は,第1に株価データ等を用いた株式取引所における価格形成の分析,第2に財務諸表等を用いた株式取引所経営に関する経営史的分析から構成される。これら2つの分析に要する基礎的史料の精査が本年度中に完了し,分析に向けたデータ作成まで着手できた。さらには,上記【研究実績の概要】で先述したように,史料収集の過程では未見の新史料をも発掘した。以上の状況より現時点までに本研究課題の進捗状況は「(2)おおむね順調に進展している。」と判断しうる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度には以下3点の作業を進めたい。 第1は,株式取引所における価格形成の分析に必要な東京株式取引所の株価・取引量データを作成し,同データから研究分担者(野田)が中心となって価格形成における情報効率性を検討する。 第2は,株式取引所経営に関する経営史的分析に必要な東京株式取引所の貸借対照表と損益計算書を復元し,それら財務諸表から研究代表者(花井)と研究分担者(前田)が中心となって戦前期株式取引所経営の動向を検討する。 第3は,平成30年度に発掘した「全国取引所営業概表」を分析し,研究代表者(花井)と研究分担者(前田)が中心となって戦間期の全国における先物取引の動向を網羅的に概観する。
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Causes of Carryover |
本研究計画策定時点では利用できる見込がなかった「企業史料統合データベース」を慶應義塾大学が購入し,同データベースより営業報告書の収集が実施できるようになり,国内旅費など史料調査に要する費用が想定より縮減した。そこで,関連史料の調査範囲拡大によって予算の有意義な活用に努め,成果の1つに【研究実施の概要】で先述した新史料の発掘も位置付けられる。それでもなお,若干額を次年度に持ち越すこととなったが,本年度と同様に予算の有意義な活用に努めたい。
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Research Products
(9 results)