2018 Fiscal Year Research-status Report
Research on original trade record of Chinese Maritime Custom with non-treaty countries in the latter half of 19th century
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18K01739
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
濱下 武志 龍谷大学, 公私立大学の部局等, フェロー (90126368)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小泉 順子 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 教授 (70234672)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 中国海関貿易統計 / 無条約国貿易統計 / 広州貿易統計 / 香港船舶統計 / シャム米輸出統計 / シャムの貿易統計 |
Outline of Annual Research Achievements |
アジアの近代史の中で、19世紀中葉の欧米との条約締結とアジア開港という事態は、欧米から見たアジアの歴史であるが、アジアで1000年以上にわたり継続していた朝貢関係は、全て欧米との条約関係によって取って代られたわけではない。中国の旧朝貢国は、中固との関係に於いてはベトナムやマレーシアのような植民地となった旧王権や、香港のように割譲されて植民地となったところがある。そのなかで、朝鮮、琉球、シャムはある期間中国との関係に於いては無条約国となり、最終的にはシャムのみが無条約国となって中国圏の外に位置するようになる。翻って中国で登場した新たな貿易管理体制である海関は、これらの旧朝貢国に対して、新たな対応を迫られることになった。本研究課題は、この無条約国との貿易の記述に関して、代表者は中国側から、共同研究者はシャムの側から、初期の中国海闘がいわゆる朝貢関係と条約関係の聞を揺れ動いた実態を、統計処理の側面から検討することを目的としている。 中国海関において、19世紀後半期の国際貿易の集計方法や統計処理をめぐって生じた問題は、以下の三項を主要な点としている。すなわち、A.シャムなど、旧朝貢国から無条約国に転じた国との貿易統計の処理問題、B.自由貿易政策下の香港には船籍以外には公式の貿易統計が存在しないことから生じた問題、c.ある期間には金銀流出入の統計が存在しない問題である。以上の3項目を中心に資料調査を行った。 これらのなかで、とりわけAの無条約国との貿易問題は、いわば近代アジアが歴史的な地域聞の貿易関係を維持しており、貿易統計上も明示すべき対応が求められた課題であったが、中国海関は、朝貢貿易時代の商品貿易を維持しながら、貿易関係は不問にした。この点は、本研究課題のように、海関の統計問題を歴史的に再検討しつつ、無条約国側と中国側の重層的な貿易統計の原資料相互の突き合わせによって検討を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、香港をめぐる貿易統計の内実について現地調査を行い原資料を閲読し、以下のような基本的な特徴を把握した。 香港との貿易の統計上の分類は, 1883年時点までは、行政上は外国として処理されたが,貿易上では,中国経済の一環として処理される部分がある。香港との貿易統計で問題とされる点は,輸出貿易よりも輸入貿易,とりわけ,アヘンの輸入にあった。香港を経由する量は,直接に中国にもたらされる量よりも大であり,中国のアヘン輸入を取扱う場合には,香港からの輸入問題が大きかった。 このアヘン貿易とも関連して,香港貿易は密輸問題と密接な関係を持っていた。このため清朝政府は海関を香港に設置することを要求するが実現せず,香港政府と交渉を重ねながら、九龍関を1888年に設霞し,香港水道をとり囲むように海関分署を設置していく。香港問題は,統計の方法のみならず,海関の管理運営とも密接に関係しており,この状況は,多少の差こそあれ,他の開港場においても,従来の貿易や取引の枠との摩擦が生じた。本研究課題が香港貿易の構造を明らかにし、統計問題上の課題を提示することは、中国の、貿易構造の特徴のみならず、当時の世界貿易の実際の構造を明らかにする上でも重要であることを確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
海関報告のうち,統計に関するものとして以下の五種類が刊行されていた。すなわち、 1) 上海税関日刊統計Shanghai Customs Daily Returns (1866 ~ )、2)貿易季刊統計Quarterly Returns of Trade (1869~) 、3) 歴年貿易統計Annual Returns of Trade (1859~) 、4) 貿易報告(隔年) Reports on Trade (1865 ~ )、5)中国語版海関貿易冊(1875,1889~) である。これらの5種のなかで、無条約国貿易の記載のあるものを抜き出し、中国側の統計処理を確認する。 並行して、シャムの米貿易に関係する、香港、シャム、シンガポール、広州、イギリスの現地資料調査により無条約国側の統計資料を収集し比較総合する。具体的には、香港、タイ、シンガポール、広州ならびにイギリスのアーカイブスに所蔵される貿易統計関連資料を収集・検討する。並行して新聞など刊行された史料の収集も進める。
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Causes of Carryover |
本来の計画においては、今年度にイギリス調査を行い、香港貿易に関するイギリス外務省並びに植民地省の政策並びに見解の相違を検討する予定であった。しかし、香港における調査において予想以上に多様に存在し、また量的にも多くあり、その収集と整理に多くに時間を必要としたため、イギリスの調査を次年度に行うことが適当であると判断した。次年度に、イギリスにおいてより時間をかけた充実した調査を行う予定である。
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Research Products
(3 results)