A Study of Sailing Ships in the Early Modern Era

2023 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 18K01743
• Research Institution: Kanagawa University
• Principal Investigator: 木庭 俊彦 神奈川大学, 経済学部, 准教授 (10553464)
• Project Period (FY): 2018-04-01 – 2024-03-31
• Keywords: 海運史 / 石炭 / 三池炭鉱 / 帆船

Outline of Annual Research Achievements

本研究は、19世紀半ばから20世紀初頭にかけての「三池炭」（いわゆる三池炭鉱で採掘された石炭）の流通構造を明らかにし、石炭産業の発展に果たした小型廻船と船問屋の役割を強調するものである。島原（現長崎県島原市）の船問屋・山本家の記録、官営三池炭礦および三井三池炭礦の資料を用いて、石炭販売・輸送の実態から炭鉱、船問屋、帆船（船主）の三者の取引関係について考察する。
本年度においては、山本家文書のうち明治10年前後の石炭取引にかかわる資料を閲覧・撮影した。三池炭鉱が官営に移った明治6年以後の山本屋の貸付状況、石炭取引量などを示す記録を丹念に収集した。
また、前年度と同様に、石炭取引の記録である「大福仕切帳」の記録をデータベース化した。山本屋をつうじて石炭を購入していた買積船の船名・船頭名、購入量、購入金額、代金の支払い状況に関する情報を集めた。くわえて、明治元年～6年頃までの主要な三池炭採掘者であり、販売者とみられる平野山御役所（柳川藩）からの石炭供給量、代金の支払い状況を明らかにするために、明治3年の「大福引合帳」の数値を入力した。
さらに、本年度においては、石炭を購入する番船（買積船）に対する貸し付け状況を記した「大福元船帳」の情報を集めた。酒、酢、奉納料など、買積船の日々の生活に関する支出項目（貸付額）が記録されており、入港から出港までの買積船の活動状況や代金精算の実態について考察することができる。
本年度は最終年度であるため、データベース化した山本屋の記録をもとに、買積船と山本屋、炭鉱（平野山、三池藩、官営三池鉱山）と山本屋、炭鉱と買積船、「上荷船」（三池炭鉱から山本屋に届ける小船）と山本屋との関係について考察した。三池炭の流通過程と買積船の動向を復元していく作業をつうじて、幕末から明治初期にかけての石炭取引および海運取引のあり方が解明できると考えている。