2018 Fiscal Year Research-status Report
エコシステム形成における大企業とベンチャーの相互作用
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18K01745
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
福嶋 路 東北大学, 経済学研究科, 教授 (70292191)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
牧 兼充 早稲田大学, 商学学術院(経営管理研究科), 准教授 (60348852)
新藤 晴臣 大阪市立大学, 大学院都市経営研究科, 教授 (70440188)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ベンチャー / 大企業 / エコシステム / スピンオフ / M&A |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、企業のスピンオフとM&Aが、関係する組織本体およびその企業の属するエコシステムに与える影響について明らかにすることである。 第一に、サンディエゴにおけるエコシステムの形成において大企業からのスピンオフについての事例を作成した。具体的にはICT産業のLinkbit社とQualcom社、製薬産業ではHybritech社を取り上げ、これら企業がスピンオフを生み出した事例を調査しつつ、サンディエゴの新産業である遺伝子関連産業のスピンオフ、具体的には遺伝子解析装置シーケンサーを開発製造するIllumina社と、同社からのスピンオフ、および同社によるスピンオフの買収の事例について調査をした。 第二に日本企業におけるスピンオフの事例を調査した。日本における大企業からスピンオフの研究は限られている。しかし初期のベンチャー論の研究(中村秀一郎、清成忠雄、平尾光司や国民金融公庫の調査など)のレビューより、1980年代の日本のベンチャーを起業した人材の多くは大企業からのスピンオフであったことが明らかにされている。 日本のスピンオフの調査の中で、スピンオフをした後、スピンオフ元の会社に買収されたという事例があり、それが母体組織の活性化につながったという企業、N社の事例について調査をした。その事例については次年度にワーキングペーパーとしてまとめる予定である。さらにスピンオフしたのちにスピンオフ同士で人材をやり取りしたり仕事を回したりして、生存率を高めているというA社とそこからのスピンオフの活動について、関係者に調査協力を得ることができた。 第三に中国のスピンオフについては、北京および深センのベンチャーへの訪問を行い実態把握に努め、専門家の協力も得て、その成果の一部は組織学会の一セッションとして、日欧中のエコシステムの比較として発表された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
既存研究レビューは進んでいる。サンディエゴについては有名な事例であり資料も関係者との知己もあるため、調査が進めやすい環境にあった。日本のおける調査において、同研究課題の視点での調査があまりなかったので事例を探すことに時間を費やしたが、他の調査で知りえた事例の中に、本研究課題に適合するものをいくつか発見でき、次年度以降の調査に進めることが可能な状態になっている。中国については北京での調査は順調に行われており、次年度に成果が発表予定である。深センについては中国の専門家の意見を参考にしつつ調査が行われる。全体的に興味深い事例を発見できている。他方で、調査すべき対象が増えていることで、それをまとめる時間が足りないという悩みがではじめているが、次年度以降少しずつでもアウトプットを出していきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
スピンオフとその後のスピンオフ同士の関係については近年、論文も増えてきているため、そちらのレビューをさらに充実させていく。サンディエゴ調査については引き続きIllumina社に焦点をあてたスピンオフ&M&A現象を追跡調査していく。中国については北京についての調査結果をまとめ成果を形にする。またテンセントやアリババなど深セン地域におけるスピンオフ&M&Aの調査を追加していく。日本についてはNH社の事例を前半にまとめ、同時にA社とそことのスピンオフおよびエコシステム形成について既存研究を参照にしつつインタビュー調査を進めていく。
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Causes of Carryover |
想定した金額より安く購入ができた物品があったため端数が残った。4,245円については書籍一冊購入できる程度の金額のため、次年度の物品費に回す。
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