2020 Fiscal Year Research-status Report
地域文化ストックアプローチによる創造的クラスターモデル構築に関する研究
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18K01749
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
安嶋 是晴 富山大学, 学術研究部芸術文化学系, 准教授 (40401880)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古池 嘉和 名古屋学院大学, 現代社会学部, 教授 (50340063)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 伝統産業 / 伝統文化 / 地場産業 / 輪島塗 / 井波彫刻 / 産業集積 / 伝統技術 / 職人 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、伝統産地の動向分析のためのツールとして、新たに打ち立てた「地域文化ストック」の有効性を明らかにすることである。地域文化ストックとは、一般的な文化資本に生活文化を融合した概念、すなわち地域内での生活や人々のつながりで生成される文化的な共有感などを加味したものである。 本年度の研究活動は以下のとおりである。 昨年度の調査では、地域基盤のドメイン、すなわち輪島漆器産地の御当組による神事や信仰心、井波彫刻産地の土徳の里の精神文化が、それぞれの地域の日常生活に深く浸透し、さらに地域風土・気質と結びつき産地に影響を与えていることが明らかとなった。これらを深めていくために研究会を行うとともに、団体や職人へのヒアリングを実施した。輪島の「御当組」は、数え40歳の厄年に地域の神事を1年間担うもので、時代背景や参加メンバーによって実施形態は異なるが、神事はほぼ同一であり、そのプロセスで地域の共通基盤を理解していく。一方で井波の「土徳の里」の根底にあるのは浄土真宗である。井波を含む南砺市で受け継がれる「人」「自然」「風物」「考え方」など土地がもつ固有の文化であり、人を敬い慈しむ品格の高い信仰心である。いずれも言語化しにくい思考や精神性などに関することで、地域のさまざまな主体、産地の技術、制度と関わっていることが明らかとなった。また新型コロナウイルス(covid19)で出張・調査が困難となったため、比較可能な近隣の伝統産地(高岡漆器、高岡銅器、越中福岡の菅笠)などの調査研究を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
3年目である本年度の計画は、初年度に行ってきた文献調査やヒアリング、産地調査などの実態把握、2年目の地域文化ストックに関する4要素(①主体、②技術、③制度、④地域)の各分析や周辺の影響・効果を明確にして総合化し、最終的に新たな創造的クラスターモデル構築の構想を取りまとめ、報告会を地域で行う予定であった。 こうした計画に対し、昨年度、輪島漆器産地には神事を基盤とした御当組と呼ばれる同級生の紐帯機能があり、輪島固有の塗師屋文化がこの紐帯によって循環していることが明らかとなった。また井波彫刻産地でも、瑞泉寺の仏教信仰を基盤とした「土徳の里」の精神風土が存在し、井波の職人思想に影響を与えていることが明らかになった。その結果、追加調査が必要となった。なにより新型コロナウイルス(covid19)により調査や研究会が思うように開催することができず、最終報告会も実施できなかった。以上の事からやや遅れていると判断した。なお今後の調査や研究会については、オンラインなどの技術も活用しながら円滑な実施を心掛ける。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度の調査研究は、当採択課題の最終年度であるため、研究成果のとりまとめに向けた作業を行う。また並行して令和2年度同様の分担で、輪島漆器産地、井波彫刻産地の現地調査を行う。特に輪島の「御当組」、井波の「土徳の里」について補足のヒアリング調査を行い、地域の主体、産地の技術、制度との相互関係を捉えられるよう、対象を拡大して実施する。また研究会については、zoom などのオンラインも活用しながら定期的に開催し、調査や分析結果を相互に報告しあい、共通認識を深めるとともに課題を整理し、報告書としてまとめていく。およそまとまった内容は輪島、井波の地域で報告会を開催し、地域住民と意見交換を行いながら研究結果を検証する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス(covid-19)による調査の遅れで旅費の執行ができなかった。令和3年度は調査およびまとめの作業に使用していく。
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Research Products
(3 results)