2018 Fiscal Year Research-status Report
女性管理職のストレスマネジメントに関する包括的考察:経営学と経済学の両面から
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18K01751
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
岩田 一哲 信州大学, 学術研究院社会科学系, 准教授 (70345859)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉浦 裕晃 愛知大学, 経済学部, 教授 (60345858)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 女性管理職 / ストレス / 日米比較 / 過労死 / 過労自殺 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、女性管理職のストレスマネジメントに関する包括的考察として、女性管理職に焦点を当てて、文献研究等を行ってきた。女性管理職登用に関する文献は数多くあるが、女性管理職が管理職になった後のストレス対応については、検討数が非常に少ない。 文献研究等の結果、次年度のアンケート調査へ向けた質問票の内容がある程度確定した。ストレスの原因として、仕事の量的・質的負荷、役割曖昧性、役割葛藤、自律性を、ストレスの結果として、自殺を予測できるK6尺度を、媒介要因として、ソーシャルスキルとソーシャルサポートを援用することにした。 これらの尺度を用いて、女性管理職を中心としたアンケート調査を行うめどが立った。また、近年は顧客との関係によるストレス増大も懸念されるため、顧客との関係や顧客からの圧力等の尺度も検討課題に据え、最終的なアンケート調査尺度の作成へ進めたい。 また本年度は、「女性管理職のストレス因の探索-日米の比較から-」と題する研究発表を、この分野で日本で最も大きな学会である日本労務学会にて報告し、「身体的ストレスと長時間労働の決定因の探索」と題する研究論文を刊行した。前者の学会報告は、女性管理職のストレスの日米比較を行い、日米で共通のストレス因として役割葛藤と同調のパーソナリティがあることを指摘し、日米の差異として、仕事の量的・質的負荷はアメリカではストレス因ではなかったことを挙げ、アメリカでは仕事の範囲が明確であるため、このようなストレスが生じないことが把握できた。また、後者の論文は、過労死の原因とされる長時間労働が仕事の量的負荷から生じ、ストレスの原因は役割葛藤であることを実証的に確認した。 以上の点から、本年度の研究は、非常に大きな進展があったと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
来年度のアンケート調査に向けた質問票作成がほぼ完了し、これから、実際のWeb調査を用いたアンケート調査を進めることができるようになった。今回の調査では、これまでの調査に加えて、顧客との関連や顧客からの圧力などによるストレスについても検討できるよう尺度を構成するため、従来の調査よりもさらに現代的ストレスへの対応が可能になる。 また、昨年度に行った、女性管理職のストレスに関する日米比較調査をまとめて学会発表も行うことができた。日本における女性管理職研究の中で、ストレスの国際比較に関する研究はほとんどなかったため、この点も研究の進捗に大きな影響を与えることとなろう。従来から、過労死の原因として考えられている長時間労働と、過労自殺につながる自殺を予測するストレスの原因は異なることを指摘してきたが、この内容を論文として提示することができ、過労死と過労自殺の原因の違いがより鮮明に提示できたと考えられる。 これらの研究業績と、以前の研究業績との関連を検討しながら、女性管理職のストレスとその原因に関する検討についても大きな弾みをつけることが可能となった。具体的には、これまで積み上げてきた研究実績と来年度に行うアンケート調査の結果の相違点をまとめることによって、女性管理職のストレスとは何か、また、そのストレスを削減するための方法は何かについて、包括的な理解が得られると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策については、以下の二つを挙げたい。 一つ目は、女性管理職のストレスとストレス因に関するWebアンケート調査を行うことである。本年度の文献等の調査によって、女性管理職のストレスとストレス因を取り巻く内容がほぼ把握でき、実際の質問票もある程度確定した。したがって、今後は実際のWeb調査へ向けて、サンプル数の確保や国際比較も含めた対象者の選定を行い、実際の調査を行いたいと考える。 二つ目は、顧客との関係や顧客からの圧力に関する内容を本研究に組み入れる可能性についてである。職場でのストレスといえば、上司・同僚・部下といった所属している組織内の対人関係から生じるストレスがクローズアップされているが、現在の管理職は、組織内だけで仕事を完結するのではなく、組織外へ出て自ら革新を起こす人材としても期待されている。特に顧客との関係は、より重要性が増してきている。それだけに、組織外の対象ではあるものの、組織の成長や発展にとって重要な役割を担っている顧客との関係は、大変重要な課題であることは間違いないし、また、顧客との関係からのストレスも特に管理職では多くなっているのではないかと推察される。したがって、当初の研究内容に顧客との関係から生じるストレスも含め、さらに女性管理職のストレスに関する包括的な検討を行ってゆきたい。
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Causes of Carryover |
本研究は、大規模Web調査を基本とした内容である。したがって、調査前に必要な金額以外は、Web調査自体になるべく多くの金額を投入する必要がある。来年度にWeb調査を予定しているため、今年度に残った資金をすべて次年度に引き継ぎたい。
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Research Products
(2 results)