2019 Fiscal Year Research-status Report
価値観の相互影響メカニズム及び従業員の組織行動との関連:衝突を成長の機会に
Project/Area Number |
18K01753
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
王 英燕 慶應義塾大学, 商学部(三田), 教授 (10456759)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 理念 / 組織アイデンティティ / 組織の発展段階 / アイデンティティ・マネジメント |
Outline of Annual Research Achievements |
二年目の研究は、組織アイデンティティの中核である「理念」に着目し、組織運営の上で異なる発展ステージごとに直面するアイデンティティ問題に対する、理念装置発動のプロセスとアイデンティティ形成のメカニズムについての理論モデルを提示した。組織アイデンティティの研究視座を踏まえて、組織の発展段階で直面するアイデンティティ欠如、アイデンティティ曖昧、アイデンティティ矛盾、アイデンティティ停滞とアイデンティティ喪失の五つの問題に分類した。さらに、これらのアイデンティティ脅威に対して、理念の策定と公開、再解釈または精緻化、改定または刷新など、装置の起動がいかにアイデンティティ問題の解決の糸口に繋がるかを分析した。最後に、理念装置を中心とした組織アイデンティティ・マネジメントのモデルを提示し、アイデンティティ主張の導出、アイデンティティ変化の促進、アイデンティティ危機の顕在化とアイデンティティ主張の正当化という四つのプロセスの関連性と、全体を通しての組織アイデンティティ・マネジメントのダイナミズムを明らかにした。 また、聞き取り調査では元宝塚劇団員にインタビューを行った。宝塚学校時代の教育経験、仕事・舞台に対する思い、タカラジェンヌがどのように理念を実行するかについて調査することができた。特に、フォーマルとインフォーマルなネットワークの両方でトレーニングを受け、「規範」である「すみれコード」を守ることで理念を実現させようとすることが明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
二年目は、理念装置を中心とするアイデンティティ・マネジメントモデルの作成以外に、ミッション・アイデンティティ、組織アイデンティティ、変革型リーダーシップに関するアンケート調査を行った。初年度の企業理念、自己アイデンティティとリーダーシップという三つの側面に関するそれぞれの検討を踏まえて、二年目はより包括的なモデルを提示した。この理論モデルは、多くの先行研究で取り入れた属人的なリーダーシップに依存する解釈ではなく、より組織の長期的成長の側面から構築したため、価値観の相互影響メカニズムの解明にマクロ的要因を盛り込むことが可能である。さらに、最初の聞取り調査として、価値観の浸透を徹底的に大切にする演劇業界(宝塚)を対象に行い、今後の定性調査のための準備も計画中である。 以上の進捗状況より、本研究の当初の計画である大きな枠組みの構成については予定通りである。また、当初の枠組み以外にも、組織の長期的成長段階の違いという要因を取り入れて、発展段階ごとの価値観の相互浸透の違いを考察する予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は、当初の計画通りに進める。三年目となる令和2年(2020年)は理念装置を中心とする組織アイデンティティ・ワークのマネジメントモデルを中心に検証を行う。具体的には、組織のミッション・アイデンティティ、変革型リーダーシップ、組織アイデンティティの認知を踏まえて、変動の激しい環境、組織内他者との価値観の類似度の高い環境と低い環境に分けて検証する。組織文脈的要因、環境要因、価値観の類似度要因の影響下で、従業員の自己アイデンティティの捉え方の違いについても考察する。自己アイデンティティの捉え方は、そうした価値観の相互影響メカニズムが反映されていると考えられるためである。 さらに、当初計画したアンケート調査以外に、実験を追加して検証を行う。具体的には四つのカテゴリーに分けて、それぞれのカテゴリーの実験者の反応がどのように違うかを比較することで、価値観の相互影響の中で特にアイデンティティの捉え方がどのように影響されるかの検証を行う予定である。
|
Research Products
(3 results)